Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

森内俊雄「空にはメトロノーム」

2021-02-08 08:11:16 | 読書
書肆山田 (2003/7).

古書店で700円.美しい造本に惹かれた.トップの写真のように,チリ(表紙と本体の大きさの違い)の幅が,天と地で違うのは何か意味があるのだろうか.

函入り...と言いたいが,この函には底がなく,ただの筒である.筒の下部にはワレメ.本体の表紙にはパイプがエンボス加工されている.このパイプの意味は (常識かもしれないが...) 本書を中ほどまで読むと,なんとなく解る.共犯=装丁は菊地信義.



主犯=著者は長編「十一月の少女」で知っていた.大人のメルヘン・ややカマトト的という印象だった.この「空には...」にはかなり面食らったが,本領発揮というところかな.

いろいろな書き出し:
- 陶土を轆轤ににかけているような午後になった.
- 南西の丘陵地帯に,水彩画のパレットを拡げたような遊園地がある.
- アンリ・ルソーのような日曜日の午後である.
- 梅雨には,朝の浴室の匂いがある.
...

でも,書き出しは書き出し,全体を貫くテーマには帯の文章
****「今」「今の影」を見つめつくす。そして、地には遠く遥かな陽光。どこかで少女が身をよじらせて、声もなく叫ぶ。太古からの、さびしい官能の閃光。**** 
の後半が関わっているが,この惹句はちょっとおおげさ.
ヘンタイと貶めるには,あっさりともたれない記述ではある.

全24編.文芸雑誌「新潮」へ毎月1編ずつ見開きページで発表された.著者の「あとがき」によれば「掌編小説でも散文詩といった思いもなく,ようするに能うかぎり,人をしてひとつの無限の世界へいざなうに値する文章を書きたいと念じた」とのこと.
いざなわれました.
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