東京創元社 創元SF文庫(2021/1).
出版社による内容紹介*****
ある夜、会社からの帰途にあった吉田大輔氏は、一瞬のうちに19329人に増殖した――第7回創元SF短編賞受賞作「吉田同名」に始まる、まったく新しい小説世界。文字通り“半分”になった家に住む人々と、それを奇妙な情熱で観察する群衆をめぐる表題作など四編を収める。突飛なアイデアと語りの魔術で魅惑的な物語を紡ぎ出し、喝采をもって迎えられた著者の記念すべき第一作品集。解説=飛浩隆*****
短編3+中編1.創元SF短編賞選考委員のひとり,大森望が「不条理な出来事から出発し,その先をリアルにシミュレートするのは,1970年代日本SFの十八番」と言っている.ただ,1973年の小松左京「日本沈没」と違うのは,論理的な解決は示されず,読者は不条理の中に放り出されて終わること.どの作品も似たようなもの.
しかし,1915年のカフカ「変身」の昔から,不条理な出来事から出発し,その先をリアルにシミュレートするのは日本のお家芸とも言いかねる.
ぼく的にはこの本では,最初に書かれたという中編「バス停夜想曲,あるいはロッタリー999」がイチオシ.乗り継ぎのために長距離バスを降りると,そこは砂塵の舞う赤茶けた十字路と強烈な日差し,そこではどこに行くバスがいつ来るか,わからないままに何日も待っている人々がたむろしている.
これは岩波文庫(1992)「悪魔の涎・追い求める男」所収・1967 年のフリオ・コルタサルの短編「南部高速道路」を思い出させた.高速道路の大渋滞で,何ヶ月も (だったかな?) 動かない車列に,一種の共同体が発生するストーリーだった.
図書館が休館なのに何か読みたくなり,書店で買ったが.電子本にしておけばよかったと,反省.
出版社による内容紹介*****
ある夜、会社からの帰途にあった吉田大輔氏は、一瞬のうちに19329人に増殖した――第7回創元SF短編賞受賞作「吉田同名」に始まる、まったく新しい小説世界。文字通り“半分”になった家に住む人々と、それを奇妙な情熱で観察する群衆をめぐる表題作など四編を収める。突飛なアイデアと語りの魔術で魅惑的な物語を紡ぎ出し、喝采をもって迎えられた著者の記念すべき第一作品集。解説=飛浩隆*****
短編3+中編1.創元SF短編賞選考委員のひとり,大森望が「不条理な出来事から出発し,その先をリアルにシミュレートするのは,1970年代日本SFの十八番」と言っている.ただ,1973年の小松左京「日本沈没」と違うのは,論理的な解決は示されず,読者は不条理の中に放り出されて終わること.どの作品も似たようなもの.
しかし,1915年のカフカ「変身」の昔から,不条理な出来事から出発し,その先をリアルにシミュレートするのは日本のお家芸とも言いかねる.
ぼく的にはこの本では,最初に書かれたという中編「バス停夜想曲,あるいはロッタリー999」がイチオシ.乗り継ぎのために長距離バスを降りると,そこは砂塵の舞う赤茶けた十字路と強烈な日差し,そこではどこに行くバスがいつ来るか,わからないままに何日も待っている人々がたむろしている.
これは岩波文庫(1992)「悪魔の涎・追い求める男」所収・1967 年のフリオ・コルタサルの短編「南部高速道路」を思い出させた.高速道路の大渋滞で,何ヶ月も (だったかな?) 動かない車列に,一種の共同体が発生するストーリーだった.
図書館が休館なのに何か読みたくなり,書店で買ったが.電子本にしておけばよかったと,反省.