中野 慶,かもがわ出版 (2021/12).
著者は,岩波書店で29年間 単行本や岩波現代文庫などの編集者として勤務,とある.
やけに長いプロローグで,これは一体どういう本だろうと思った.
スタッフ3人のコンサル事務所 (親会社は存在する) の新人女性社員が「研修」として,岩波書店の管理職・組合幹部・社員・ OB/OG に取材 ? するという,現実的とは思えない設定に立つ小説.
研修のテーマは労使関係.この社の性別や学歴による格差を否定する賃金体系は理想的に見えるが,労働時間や仕事の特性を考慮しない画一主義・悪平等主義でもある.
この本では共産党との関係は昔話とされている.
今の自分にはほとんど興味がない内容だが,図書館で借りた以上は読まないと...という「もったいない精神」みたいな義務感で読了.
2-3 人の会話で進むシーンが大部分だが,誰のセリフか分からない部分が多々ある.「編集者」の著書とは思えない.
ヒロインは勉強家で,研修先の岩波書店にヘッドハントされそうになる.
帯に「ユーモア小説」とあるが,ユーモア部分はもっぱらヒロインの事務所の先輩が担当する.筋肉ウーマンで直情径行.エピローグでも事件 ? を起こすが,この部分はなくもがなと思う.概してこの「小説」のエンタメ小説的な部分はうまくいっていない.労使関係については,岩波の内情に無知だが,それなりに興味を持てた.
東大 ? のことをいちいち「最難関大学」と言うのは変だ.