フェルディナント・フォン・シーラッハ.酒寄進一 訳「珈琲と煙草」東京創元社 (2023/2).
著者は本書の文章を Beobachtung 観察 と言い,訳者は「観察記録」と言っている.著者の話し方にはコーヒーをひと口飲むときや,たばこを一服するときにリズムであり,本書はそのリズムで見据えた「観察記録の集積」なのだそうだ.
言ってしまえばこれは 1 から 48 まで番号付けされた,エッセイと短編小説である.タイトルがない 48 編は1ページに足りないものから数ページのものまで,内容は互いに関連がない.
Amazon の紹介
*****異様な罪を犯した人間たちの物語.幼少期の体験を描く自伝的エッセイ.社会のさまざまな出来事についての観察とメモ.法の観念と人間の尊厳,芸術についての論考.作家としての物語へのアプローチの仕方……
数ページずつ綴られる断片的な文章は,たがいに絡みあい,複雑で芳醇な文学世界を構築する.『犯罪』で脚光を浴び,刑事専門弁護士から現代ドイツを代表する作家となった著者による,最もパーソナルで最も先鋭的な作品集.*****
浅学にして著者を知らぬまま図書館で借りた. なかには何のことかわからない部分もあったが,著者とウマが合ったようで,すらすらと読めてなんとなく納得してしまった.刑事専門弁護士の著書らしく,事件性がなくてもどこかミステリっぽいところが気に入ったのかも.ナチの高官だった祖父に関連した文章も.
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