「翼 李箱作品集」斉藤真理子訳,光文社 (古典新訳文庫 2023/11).
李箱 1910-1937.この2字にはイ・サンのルビ.でも「箱」という字の音読みは何だろう.
出版社による紹介*****
陽の差さない部屋で怠惰を愛する「僕」は、隣室で妻が「来客」からもらうお金を分け与えられて……。表題作「翼」ほか、近代化・植民地化に見舞われる朝鮮半島にて新しい文学を求めた孤高のモダンボーイの歓喜と苦闘の証たる小説、詩 (日本語詩を含む)、随筆等を収録。
この小さな本は李箱の個性の一部を照らしたものにすぎないが、絶望や恐怖とともに、その喜びの一端でも味わっていただけたら幸いである。*****
訳者による まえがきと解説がよい.
まえがきには早すぎたモダニストとある.本書にも収録されている「烏瞰図 詩第1号」は (文芸誌ではなく) 新聞に掲載されたが,このとき鳥瞰図ならぬ烏瞰図などという言葉はないと,いちど校正部から突き返されたそうだ.
「翼」など,小説では妻の売春を扱うことが多い.
トップ画像右の2枚は,著者による「翼」のための挿画だが,エリック・サティのイラストと似ていると思った...関係ないとは思うけど.
童話「牛とケットビ」(1937) は解説によれば,豊島与志雄の童話「天下一の馬」(1924) のバスティーシュであるという.著者が豊島を研究していたらしいのにびっくり.
随筆「東京」などというのもある.『銀座はさながら一冊の虚栄読本である』とか.「翼」は 1936 年の作品だが,この年京城から神田神保町へ.1937 年2月に おでん屋で呑んでいたところを逮捕され,3月に健康状態悪化として保釈されたが4月に死去,だそうだ.
図書館で借用したのだが,購入して書棚に置くのもいいかな...でも,けっきょく再読はなし,という結果に終わるかな.
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