Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

続 「ハーリー・クィンの事件簿」

2022-04-12 08:54:09 | 読書
 ふたたび,アガサ・クリスティ山田順子訳「ハーリー・クィンの事件簿」東京創元社 (創元推理文庫)について.

この短編集の狂言回しはサタスウェイトとハーリー・クィン.ふたりを探偵役と言いたいが,ホームズ・ワトソン ペアとはまるで異なる.ただしシリーズ化の意図なく始められ,6年書き続けられた短編の集積で,ふたりの役割は次第に変化する.初期はもっぱら謎解きはクィンの担当で,ずれた時間に現場に現れる 出張安楽椅子探偵の趣.しかし次第にクィンは神出鬼没となり,クィンのヒント (というより,神の啓示というのが適切か?)   よりサタスウェイトが謎を解くかたちに変化する.

本格らしい作品が多いが「ヘレネの顔」は SF 的.「ハーリクィンの小径」「海から来た男」あたりは,純文学とは違うが,とにかく幻想味を帯びている.

ハーリクィン = 道化師という説明は杉江松恋による解説にはない.
もっともこの作品群ではハーリー・クィンは全知全能の持ち主のように描かれている.かえって,相棒のサタスウェイトは愛嬌があって道化師的.

トップ画像は,"Mysterious Mr. Quin" Dodd, Mead & Company (1930 USA) 版のカバー.「空に描かれたしるし」の一場面である.メイドが汽車の煙を,赤い夕焼けの空に描かれた白い大きな手に例える.アリバイ崩しのデータを提供する彼女を,サタスウェイトは「少しばかり頭が鈍いようだ」と形容するが,それは最終的に逆転する.

図書館で借用した.

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