岡本 綺堂, 東 雅夫 編集・解説,白澤社発行・現代書館発売 (2022/10).
Amazon の紹介 より****
岡本綺堂は、幕末に幕臣の子として生まれ明治大正期に劇作家・小説家として活躍した。戯曲『番町皿屋敷』、小説『半七捕物帳』シリーズなどのほか江戸時代の奇譚を題材にした『三浦老人昔話』など江戸情緒にあふれる作品で親しまれている。この奇談の名手による珠玉の随筆・読物から、赤穂事件異聞や亡父の怪異体験、怪談芝居の裏話や近世随筆に見られる奇談など、江戸懐古と怪奇趣味に富んだ25編を収録した。*****
生誕150年を記念して岡山の勝央美術文庫で「奇譚の神様・岡本 綺堂展」が東 雅夫氏の監修のもとで開かれた.東氏はこの機会に「怪談作家・綺堂」の復活を画策し,3冊を記念出版した,2冊は平凡社 (平凡社ライブラリー) と双葉社から刊行された小説集で,残る一冊がこの本.編者は過去に類書がないと自画自賛しておられる.
目次*****
磯部の若葉 / 磯部のやどり / 雨夜の怪談 / 思い出草 / 後の大師詣 / 甲字楼夜話 / 山霧 / 江戸の化物 / 人形の趣味 / 震災の記 / 地震雑詠 / 焼かれた夜 / 十番雑記 / 魚妖 / 猫騒動の怪談 / 桜姫と芋と狐と / 四谷怪談異説 / 自来也の話 / 円朝全集 / 妖怪漫談 / 番町皿屋敷 -「創作の思い出」より / 夢のお七 / 鯉 / 牛 / 虎*****
冒頭「磯部の...」2篇には大野九郎兵衛が登場.現代人には通じないかも.
このブログを書いていると能登大地震の報.本書「震災の記」以下の日記調の4篇は関東大震災に関するもの.被災した家族の一員に女中も含まれるところが時代を感じさせる.被災現場に埋まっていた人形で一句...
わびしさや袖の焦げたる秋の雛
「猫騒動...」から「自来也」は芝居の脚本に関すること.
随筆選とあるが小説スタイルのものもある.執筆時期は大正から昭和だが,最後,昭和 11-12 年サンデー毎日に発表の「牛」「虎」などが読ませる.比べると他の多くは読ませるつもりが希薄に感じられた.
16 トンの子供の頃は慶應生まれの爺さん婆さんがまだ生きていた.綺堂 1872-1939 も 16 トンの祖父母よりちょっと上の世代.半七捕物帳にしてから,若ものを相手に老人が昔を語るというスタイルだったが,この本は岡本綺堂が半七を差し置いて表面に出てきた感じ.
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