Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

鳥の歌の倍音

2015-03-10 08:19:45 | 新音律


ヒトの歌声は整数倍音を持っている.鳥の声ではどうだろうか?
このウグイスは見ているだけで楽しい.12-15 秒あたりのホーホケキョのソノグラムがこれ.声が高すぎで高域部分はわからないが,整数倍音はみごとである.奇数次しか存在しない!



しかしどの鳥でも,というわけではない.ウグイス (nightingale) をもてはやすのは,ヒトは整数倍音構造を持つと良い声だと,勝手に評価しているだけなんだろう.

次の図は http://youtu.be/SUAN-n719So からいただいたカッコーで,二度鳴いている.単一周波数しかないと言いたいくらいで,整数倍音は存在するけれどかなり弱い.



野鳥ではなく,ペットとして飼われている鳥ではどうだろうか.岡ノ谷一夫「小鳥の歌からヒトの言葉へ」岩波科学ライブラリー (2003/06) によれば,ジュウシマツは成長とともに歌が「上手くなる」という (この本は増補改定版が出ている).数十日おきに採られたソノグラムが掲載されていて,上達の過程がよくわかる.歌が上手くなると整数倍音が現れる.



この動画の Youtube 動画 の6-9 秒から取ったソノグラムには,0.6 秒と 0.8 秒あたりには低音の整数倍音構造, 1.6-21秒にかけては高音の整数倍音構造が見られる.



岡ノ谷先生によれば,ジュウシマツはコシジロキンパラという野生種をペット化したものとのことである.ペットになれば生存競争から解放され,もっぱら異性を引きつけるために声に磨きをかければよい,倍音構造はその成果らしい.もともと自然界でも,歌えば天敵に見付かりやすいし,歌うための神経回路も必要だ.そうしたハンディキャップをものともしない個体は生存力が強い個体だから,メスを惹きつけ,結果として子孫も歌が上手くなる.「ハンディキャップの原理」と「性淘汰のメカニズム」である.
このページにはジュウシマツとコシジロキンパラのソノグラムが並んで載っているが,コシジロキンバイの声には倍音構造はない.野生種が倍音なんか出したら捕食されてしまうのだろう.

文鳥,カナリアなどの声も整数倍音構造を持っているようだ.

ちなみに岡ノ谷先生のご研究の目的は 0.1 秒単位の小鳥の音色の変化のパターンにヒトの言語の起源を探ることである.ジュウシマツは倍音を持つ声を,持たない声と対比させることで,一種の「語彙」として使っているらしい.




疑問その1
Youtube からサンプルした雲雀,カナリヤのソノグラムを取ろうとしたが,録音の帯域が狭すぎるようだ.整数倍音は持っているらしい.
小鳥の大きさを考えれば音が高いのはうなづけるのだが,逆にカッコーの声が低すぎるように思う.

その2
ウグイスを聞いていると,春先は鳴き方が下手くそだが,だんだん上達する.ジュウシマツのようにスペクトルも変化するのだろうか.

その3
ウグイスの喉だけ閉管構造?

同好の士をウェブで探したら
http://www.fssbirding.org.uk/costadelaluz2012trip.htm
に野鳥のソノグラムを2例発見.

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