Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

海の乙女の惜しみなさ

2020-10-12 08:50:36 | 読書
デニス・ジョンソン,藤井光訳,白水社(2019/4).

なんだかわからないままに,最後まで読まされてしまった,
表紙裏の「訳者あとがき」から引用された
*****死,老い,運命,幻覚,分身,亡霊.こうした主題をちりばめ,ときにはみずからの死を覚悟していたかと思わせるような文章を書きつけながら,ジョンソンは最後まで持ち前のユーモアを失うことはない*****
が,納得できる惹句.作者の死の直前に脱稿し,没後出版されたと聞けば,さらに納得度が向上する.

5編からなる短編集で「海の乙女の...」は最初の一編のタイトルでもある.The Largesse of the Sea Maiden の訳だが,これが何のことかわからない.「人魚」というタイトルの断章はある.初老の広告代理店に長年勤めた男のとりとめのない回顧録.

次の2編の語り手はアルコール依存症治療センターの患者と,監房の受刑者.次に登場するのは死んだはずの兄夫婦と暮らしていると信じているがん患者.読んでいるとどんどん気が滅入っていく.

最後の「ドッペルゲンガー,ポルターガイスト」では,エルヴィス・プレスリーには双子の兄弟がいて途中で入れ替わったと信じる詩人が中心.こういう都市伝説?はアメリカに根強いようだ.でも,ミステリーとして読むと支離滅裂.

読んだことを後悔はしないが,もう1冊この作家を読みたいとは思わない.

カバーイラストはあとがきにあるように,Sam Messer によるエッチング,Denis the Pirate より.ネットに原画があった.


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