
先日のうなりをテーマとしたブログにコメント (内容はブログから辿ってください) をいただいた.そこでやや詳しく計算してみた.高校数学の範囲でもできるかもしれないが,大学理工系の数学を使った.以下の内容はややマニアックです.
式(1)右辺の2項がふたつの単振動を表す.位相ψ1,ψ2を導入してみたが,ψ1=ψ2=0 としても一般性は失わない (...と思う).

第2の振動数を式(2)のように書くと,式(1)は式(3)になる.実部と虚部からg(t)の振幅と位相が

のように得られる.
ここまでの計算は
N.H.Fletcher and T.D.Rossing, "The Physics of Physical Instruments" 2nd.ed., Springer (1997)
にも掲載されていた.
あとは Mathematica でプロットしてもらえばいい.
A1=A2, Δω=ω1/10 とすれば

Δω=0.9ω1/10としてみると,コメントで指摘されたように,個々の波束の形が微妙に異なるものとなる.

A1=A2/2, Δω=ω1/10,すなわち一方の振幅を小さくすると,波束の境界がぼやける.

ところで,楽音は高調波を持つ.220Hz の「ラ」音の高調波は440Hz, 660Hz, 880Hz, ....であって220Hzずつ異なり,これらは220Hzのうなりを生じうる.小さいスピーカーは220Hzの基本波は出せない (missing fundamental) が,われわれはうなりを基本波と錯聴する,のだそうだ.
ところで、自己流の用法で若干混乱しております「missing fundamental」という用語ですが、存在している周波数スペクトル成分の個数が少なくて「公差」が現れないようなケースとなる、2音(楽音でも純音でも)の合成波とかには用いない方が良いでしょうか?
例えば、ピッチ周波数比が3:5の2音の合成で周波数比1の音が聴こえるような場合です。実際、純正長6度のレとシの重音で2オクターブ下のソが聴こえます。この音のスペクトル成分は基本波(ソ)と2倍波、4倍波が欠けていますが、3倍波と5倍波は存在します。それらの間には「公差」は現れませんので missing fundamental とは呼ばない方が良いでしょうか? しかし、これは周波数比が差音の|5-3|=2 ではないので、「うなり」とも呼ばない方が良いような気がします。
fundamental は基本周波数のことですので,どれが基本周波数かはっきりしていないと使えないようにも思いますが...