濵田 研吾,筑摩書房 (ちくま文庫 2020/7).
出版社の内容紹介*****
あの俳優たちの戦争とは?鶴田浩二、伊藤雄之助、加東大介、佐野周二、片岡千恵蔵、芦田伸介、西村晃、山田五十鈴…。昭和の映画・舞台・テレビで活躍したスター、名優たち。その華やかな姿の裏に隠された戦争体験とは?中国大陸での戦闘、特攻隊、慰問団、疎開、引揚げ、シベリア抑留などを、書籍や雑誌インタビュー記事など活字で残された資料をもとに描きだす。*****
図書館で借用.
ロシアのウクライナ侵攻以前から戦争に興味が湧いていた.歳のせいだろう.話を聞けたかもしれない方達はほとんどこの世に居られないので,顔がわかる俳優さんたちの経験談を読むことにした.
著者は 1974 年生.若いのによく調べていると思った.
全5章.それぞれ玉音放送,戦場,慰問興行・疎開,原爆,特攻 とテーマ分けされていて,各章で数人ずつが紹介される.新劇俳優が多い.戦後,映画で活躍した人にも新劇での経験があることが多い.
断片的だが,印象に残ったことを列挙すると...
古参兵が小便をかけた飯を食うことを強要された伊藤雄之助.
徳川夢声に「連鎖反応 ヒロシマ・ユモレスク」という小説があること.
藤山一郎の「長崎の鐘」にまつわる,佐々木孝丸の小説? (タイトルの永井隆が文中では中井豊になっている)「ある原子学者の半生 永井隆」.
西村晃は玉音放送を聞いて米艦に飛行機で体当たりする決心を固め,妻にうちあけて別れをつげて,平手打ちを食わされ,目が覚める.
鶴田浩二は,特攻隊行き残りへの憧れが高じて,演じるだけでなく,自分も「特攻くずれ」であると軍歴を偽り問題になる (通説では大井航空隊の整備兵だった).この本の俳優の中でも得意な存在だが,著者の記述は暖かい.
「俳優」ではないが,落語家が登場しても良かったと思う.江戸家猫八の名前は出てくる.
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