原田マハ,文春文庫(2020/5).単行本は,文藝春秋(2017/1)
Amazon HP の紹介*****
現代のロンドン。日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受ける。
このオスカー・ワイルドの戯曲は、そのセンセーショナルな内容もさることながら、ある一人の画家を世に送り出したことでも有名だ。
彼の名は、オーブリー・ビアズリー。
保険会社の職員だったオーブリー・ビアズリーは、1890年、18歳のときに本格的に絵を描き始め、オスカー・ワイルドに見出されて「サロメ」の挿絵で一躍有名になった後、肺結核のため25歳で早逝した。
当初はフランス語で出版された「サロメ」の、英語訳出版の裏には、彼の姉で女優のメイベル、男色家としても知られたワイルドとその恋人のアルフレッド・ダグラスの、四つどもえの愛憎関係があった……。
退廃とデカダンスに彩られた、時代の寵児と夭折の天才画家、美術史の驚くべき謎に迫る傑作長篇。*****
流行作家ものだが,僕の評価ではイマイチ.
本筋をサンドイッチする,現代を舞台とする部分は蛇足.
本筋の事実上のヒロインはメイベル・ピアズリーで,純真な彼女がオスカー・ワイルド,オーブリー・ピアズリー,アルフレッド・ダグラス (「サロメ」を英訳した) の三角関係を足がかりにサロメ的妖女に変身していく物語.とは言え,彼女が用いる手練手管は常識的.文章も筋だけを書いているみたいで味わいがない...と思った.
何箇所か黒塗りのページが挿入されている.
複雑だったオーブリーの生涯を小説的に単純化しているように思われる...と言うわけで,この本に文献の筆頭に挙げられていた「ピアズリー伝」Amazon ¥1 を注文したてしまった.
ピアズリーの絵とサロメという名前は知ったのは高校時代.「サロメ」の持つ日本語みたいな響きがあやしいくて良い.ワイルドの「幸福な王子」は英語のテキストだった.「ドリアン・グレイの肖像」を「ジキル博士とハイド氏」に似ていると思った.
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