「本をつくる」で組版と活版印刷を担当した嘉端工房・高岡昌生の手になる,小谷ふみ「作品集 月の光」クルミド出版 (2015/5).
もとはポール・ヴェルレーヌの詩集『艶なる宴』(1869) に収録された 12 行詩『月の光』だが,小谷はそれを逐語訳ではなく,19 世紀におそらくはヴェルレーヌやドビュッシーたちが見たであろう景色を想像し,その絵を,現代の絵へ そして現代の言葉へと置き直した.
トップの画像は最初の 8 行に相当する部分,ちなみに,堀口大学訳(「ヴェヌレール詩集」新潮文庫(1950/11))では下のように,原文4行ずつを和文4行ずつにしている.このフォントは Oradano 明朝.
小谷さんは,原詩にある「月の光の下 / 仮面をつけ / 笛やリュートに合わせて踊る」というシーンは,現代の日本に生きる我々が実感として捉えるのはやや困難であろう,とする.堀口訳はややぼかして訳しているところを,小谷訳ではもっと大胆に意訳している.
「作品集」には原詩の組版・印刷も入っている.大文字の A と E がそれぞれ文頭に来るとき,E はコンマ何ミリか下げると,ちゃんと頭がそろって見えるのだな...と (妙なところに) 感心した.TeX もそうなっている?
ドビュッシーの『月の光 (ベルガマスク組曲)』は 1890 年.美しく印刷された楽譜も入っていたが,最初の2ページだけというのはちょっと残念.
イメージが違うかもしれないが,これは上原ひろみによるジャズ版.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます