【社説・12.29】:川重の不正/官と民の癒着を断ち切れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.29】:川重の不正/官と民の癒着を断ち切れ
閉鎖的な組織は「事なかれ主義」に陥りやすく、不正行為に対する感覚が鈍くなる。
海上自衛隊の潜水艦修理をめぐる裏金問題で、川崎重工業(神戸市中央区)が発表した特別調査委員会の調査報告は、潜水艦の修理や検査を担当する部署のコンプライアンス(法令順守)を軽視する風土や、会社として自浄作用が機能しなかったことを浮き彫りにした。
川重は遅くとも約40年前から下請け企業との架空取引で資金を捻出し、潜水艦の乗組員に家電や高級ブランド品などを贈っていた。架空取引の金額は2023年度までの6年間だけで約17億円に上り、一部は裏金としてプールしていた。
橋本康彦社長は会見で「(担当部署は)人事のローテーションがほとんどなく、中に閉じこもっていた」「残念ながらまったく関知できなかった」と述べ、謝罪した。
不正を防ぐ仕組みの立て直しと風土改革が求められる。川重は11月1日付で社長直轄の「防衛事業管理本部」を設けた。潜水艦や航空機といった機密性の高い防衛事業のコンプライアンスを一括して監査するという。実効性を高めてほしい。
組織統制が厳しく問われるのは、海自も同様である。
あきれたことに、乗組員がリストを川重側に渡し、ゲーム機などを要求していた。約20年前から金額がエスカレートし、飲食費のツケ払いにも充てられたという。調査に「(応じないと)業務がしづらいと感じた」と語った川重社員もいる。乗組員が企業にたかる悪習があったのではないか。
川重は、架空取引を含めた修理費を国の原価調査に報告していた。利益が出過ぎて防衛省との契約金額が下がらないように、原価をかさ増しする目的だったという。防衛装備品をめぐる官民の癒着そのものであり、徹底調査が不可欠だ。
25年度の政府予算案で、防衛費は過去最大の8・7兆円が計上された。膨張する防衛費の積算根拠は果たして信頼に足るのか、国民が疑念を抱くのは当然である。防衛省はこのたびの不正の全容解明を急ぎ、説明責任を果たすとともに、再発防止を徹底しなければならない。
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