自衛隊の人員不足が深刻化している。人口減少下でも持続可能な組織にしなければならない。
石破茂首相が議長を務める関係閣僚会議が、対策の基本方針をまとめた。
現在の定員は約24万7000人だが、約2万3000人が不足している。昨年度は約2万人を募集したが、半数程度しか採用できなかった。
自衛官の処遇改善に向けた関係閣僚会議であいさつする石破茂首相(左手前から2人目)=首相官邸で2024年12月20日、手塚耕一郎撮影
警察や消防、民間企業との人材獲得競争で後れを取っている。危険な任務が多く、組織に古い体質が残っていることも若者らに敬遠される一因とみられる。
対策の柱は処遇の改善だ。警察官と横並びの給与水準を引き上げる。隊舎で生活する新入隊員への給付金などを新設し、既存手当も拡充する。
定年後の生活を安定させるため、再就職支援も強化する。
自衛官は一般公務員より定年が早く、多くは56歳で退職する。再就職先のあっせんや、転職先の給与とは別に支払う給付金の水準を高める。
岸田政権は防衛費に2027年度までの5年間で総額43兆円を充てると決めた。装備拡充に注力する一方で、使いこなす人的基盤の強化への目配りは乏しかった。
本来の業務以外の仕事を兼務せざるを得ないなどの支障が生じている。企業でも賃上げが進んでおり、対策は必要だ。
ただ、経済的に困窮する若者らの弱みにつけ込むような形で、募集することは慎むべきである。
再就職先と癒着が生じないようにする手立ては必須だ。最近では、自衛隊との関わりが深い川崎重工業による接待問題が発覚した。
人手不足は日本の構造的な課題となっている。無人機の導入や人工知能(AI)による業務の効率化が不可欠だ。サイバーや宇宙など新たな領域に対処する人材の育成も求められる。陸海空の人員構成の見直しも欠かせない。
防衛省・自衛隊では不祥事が相次いでいる。性加害事件やハラスメントが表面化して、国民の信頼は大きく揺らいだ。
方針では「組織文化の改革」もうたっている。若者らがやりがいを実感でき、働きやすい組織に向けて体質を改善することが問題解決への第一歩となる。
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