【社説・01.04】:【年初に 政治】「国民本位」の流れ加速を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.04】:【年初に 政治】「国民本位」の流れ加速を
日本の政治は大きな転換点を迎えていると言ってよい。
昨年の衆院選で自民、公明両党が過半数割れし、石破政権は少数与党になった。2025年も与野党の手探り状態が続くとみられ、7月には政権の在り方を左右する参院選が控える。先行きは予断を許さない。
一方、日本が直面する課題は山積し、深刻さも増している。与野党とも政局や党利を意識しないのは難しいだろうが、それが行きすぎて国政が停滞する事態を招いてはならない。立場や状況を問わず、各党が国民本位の視点、姿勢を強めていくことが求められる。
石破茂首相は、少数与党として初めて臨んだ昨年の臨時国会は何とか乗り切った。焦点だった24年度補正予算案、政治改革法案ともに与党が野党の主張に応じる格好で成立にこぎつけた。
与野党の議論が不十分だった面や先送りした課題もあったが、各党が案を出して一致点を探る「熟議の国会」を心掛けたのは事実だろう。与党が事前に方針を決め、限られた議論で法案を通す「自民1強」時代とは異なる国会運営の姿を示した。
決定に手間はかかるが、より納得感の高い政策につなげられる可能性がある。言論の府として、このスタイルの熟度を高めていくべきだ。
ただ、その形が継続するかどうかは見通せない。1月開会の通常国会は、25年度予算案の審議を軸に、政治改革協議で結論を先送りした企業団体・献金の扱い、国民民主党との間で未決着の「年収103万円の壁」見直しを含んだ税制改革関連法案などが焦点になる。いずれも合意のハードルが高いテーマだ。
各党は、他党との間合いや世論を探りながら対応を決めていくとみられ、そこに参院選をにらんだ動きも加われば混沌(こんとん)とする可能性がある。内閣不信任案を巡って攻防があるかもしれない。石破首相は予算案が否決された場合の衆院解散の可能性にも言及している。
情勢は流動的で、国会が進み、参院選前後になるほど不透明さは増すが、国政は近年、政治不信を招く事案を積み重ねてきた。どのような局面にあっても、国民の信頼、納得に値する行動、判断を基本とするべきだ。少なくとも不信の源になってきた「政治とカネ」問題は速やかに厳格なけじめをつけたい。
政策決定に参加できるようになった野党の責任も格段に増した。説明責任や議論を軽視したり、党利党略が際立ちすぎたりすれば国民の支持も離れる。最大野党・立憲民主党は政権交代を訴えるのなら、政権構想をより具体的にする必要がある。
少子高齢化と人口減少、物価高ながら賃金が伸び悩む経済、米中関係や東アジア情勢の緊張など、日本の課題は多岐にわたる。少数与党で受け身にならざるを得ない石破首相だが、国のリーダーとして主体性、カラーを打ち出し、課題解決への議論をけん引することも不可欠だ。その姿勢がなければ支持率の回復や党内基盤の強化も見込めない。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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