《社説①・12.05》:韓国大統領が戒厳令 民主主義を脅かす暴挙だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.05》:韓国大統領が戒厳令 民主主義を脅かす暴挙だ
民主主義の原則を破壊する権力の乱用である。政権運営の行き詰まりを打開するための強権発動は言語道断だ。
韓国の尹錫(ユンソン)悦(ニョル)大統領が「非常戒厳」を宣言した。これに伴い、あらゆる政治活動を禁じ、報道機関を統制下に置く布告が出された。
大統領が戒厳令を出すことは憲法で認められているが、戦時などに限られる。「野党が憲政秩序を踏みにじっている」という主張は正当化の理由となりえない。
解除を要求する決議が国会で採択されたことを受け、尹氏は約6時間後に撤回した。
国会で過半数の議席を持ち、対決姿勢を強める野党によって追い込まれていた。閣僚や検事らの弾劾訴追案が相次いで可決され、来年度予算案の審議では大統領室の機密費などが削られた。
しかし、少数与党での政権運営を余儀なくされているのは、尹氏の強権姿勢に批判が集まり、4月の総選挙で敗北した結果である。自らの意に沿わない野党の振る舞いを「内乱を企てる反国家行為だ」と決めつけるのは、時代錯誤も甚だしい。
韓国では1980年代まで続いた軍事政権時代、戒厳令がたびたび出された。流血の事態に発展することもあった。
今回は軍や警察の部隊が国会周辺などに動員されたが、大きな衝突は起きなかった。
与野党の指導部は即座に反対姿勢を鮮明にし、大統領の暴走に歯止めをかけた。法にのっとった形で正常化が図られ、民主主義が定着していることが示された。
野党は大統領の弾劾訴追に動いており、政局が落ち着きを取り戻すには時間がかかりそうだ。韓国政治の迷走は、北東アジアの安定にとっても好ましくない。
国際情勢は揺れ動いている。北朝鮮はロシアとの軍事的な協力関係を深め、核・ミサイル開発を加速している。米国では来月、国際協調に背を向けるトランプ次期大統領が就任する。
バイデン米政権下で強化された日米韓の連携をいかに維持していくかが問われる局面だ。
日韓が従来以上に足並みをそろえていく必要がある。そのためにも、韓国の指導者には混乱の早期収拾を求めたい。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月05日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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