《社説②・12.05》:プラごみ条約先送り 生産規制への道筋模索を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.05》:プラごみ条約先送り 生産規制への道筋模索を
プラスチック汚染が地球規模で拡大しているにもかかわらず、解決の道筋を見いだすことはできなかった。国際協調の停滞は憂慮すべき事態である。
プラごみ汚染の根絶を目指し、韓国・釜山で開かれていた条約交渉会議が決裂し、策定が先送りされた。最大の焦点は生産量の規制に踏み込むかどうかだった。
出席した約180カ国・地域のうち、欧州や島しょ国など100カ国以上が、プラ素材や製品の生産量の削減目標を設定するよう提案した。一方、原料である石油を産出するサウジアラビアやロシアなどは規制に反対を続けた。会議では、相手側を非難する発言が飛び交った。
条約の議長草案には、ストローやレジ袋のような使い捨て製品の製造を禁止する項目も盛り込まれたが、合意には至らなかった。
来年、この案をもとに会議を再開することで一致したものの、開催の時期や場所は未定だ。溝を埋められる見通しも立っていない。
日本は一律の規制ではなく、各国の事情に応じて対策を進める案を掲げた。調整役を担う目的だったが、存在感を発揮できなかった。人口1人当たりで世界2位の排出大国という点からも、積極的に貢献すべきだった。
経済協力開発機構(OECD)によると、適切に処理されず廃棄されるプラごみは年2200万トンに上る。もはや、それぞれの国や業界の取り組みだけで解決できない状況にある。
リサイクルや処理で排出を完全に抑えることは難しく、生産規制に踏み込まなければ十分な効果は期待できない。
紫外線や波で砕かれたプラスチックを海洋生物が摂取している。2050年には海洋プラごみが魚の総重量を上回るとの予測もある。魚を食べた人の健康に影響が出ることも懸念されている。
国際社会はこうした危機感を共有していたはずだ。22年に開かれた国連環境総会で、生産から消費、廃棄までの「ライフサイクル」を通じて削減する条約を作ることで一致した。
交渉の原点に立ち返る時だ。実効性のあるルールの策定に向け、合意点を探る努力を尽くさなければならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月05日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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