《社説②・11.14》:パリ協定と米国 再離脱を止めなくては
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.14》:パリ協定と米国 再離脱を止めなくては
米国は世界第2位の温室効果ガスの排出大国である。その米国が削減に後ろ向きでは温暖化対策の枠組みそのものが壊れかねない。憂慮すべき状況だ。
国連気候変動枠組み条約の締約国が集う第29回会議(COP29)がアゼルバイジャンで始まった。最大の懸念材料に浮上しているのが、トランプ氏が大統領に返り咲く米国の動向である。
条約に基づく対策の国際ルール「パリ協定」からの再離脱を訴え大統領選で勝利した。
協定は、産業革命前からの気温上昇幅を1・5度に抑えるため、今世紀後半の温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す。約200カ国の締約国がそれぞれの排出削減を強化していく約束である。
「米国第一」を掲げるトランプ氏はこれに背を向けている。協定は国内の雇用や産業に不利益をもたらし、中国などの他国に有利になるとの主張だ。第1次政権時の2020年に離脱し、バイデン政権で復帰した経緯がある。
トランプ氏は選挙中、石油や天然ガスといった化石燃料を「掘って、掘って、掘りまくれ」と演説した。すでに再離脱の準備を始めているという。
トランプ氏は地球温暖化そのものを「でっち上げ」としてきた。だが、極端な豪雨や干ばつ、異常な高温に伴う健康被害など、温暖化による影響は明らかだ。
世界気象機関(WMO)は今年1~9月の世界平均気温について、産業革命前の水準からの上昇幅が1・54度を超え、今年の平均気温は観測史上最も高くなりそうだと発表した。1・5度以内に抑えるとの協定の目標達成は険しくなってきている。
少なくとも向こう4年間、米国が脱炭素に消極的になるのだとしたら、その影響は見過ごせないものになるだろう。
COP29では、途上国に対して先進国が拠出する温暖化対策資金の上積みが焦点になっている。現状目標の年1千億ドル(約15兆円)を大きく上回る年数兆ドルが求められているが、どこがどう負担するのか、合意は容易でない。
世界最大の排出国で、かつ世界第2位の経済大国なのに途上国扱いの中国、インドなどの新興国の協力を引き出すためにも、とりわけ先進諸国は国際協調の足並みを乱すべきではない。
長期的に見て脱炭素が共通の利益になることを粘り強く説き、米国が協定にとどまるよう、日本をはじめ各国は強く働きかけていく必要がある。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月14日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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