《社説①・10.21》:衆院選2024 エネルギー政策 難題に向き合う覚悟こそ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・10.21》:衆院選2024 エネルギー政策 難題に向き合う覚悟こそ
脱炭素と電力の安定供給をいかに両立させるのか。与野党は難題を直視し、衆院選でエネルギー政策の議論を深めるべきだ。
自民党は原発の最大限の利活用を訴える。デジタル社会の進展による電力需要の増加をカバーするために不可欠だと主張する。再稼働を加速させるとともに、建て替えや新増設も促進する構えだ。
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石破茂首相は就任前、東京電力福島第1原発事故を教訓に「原発ゼロに近づける最大限の努力をする」と述べていた。にもかかわらず、岸田文雄前政権の「原発回帰」路線を踏襲した。
しかも、山積する国民の疑問に全く答えていない。
使用済み核燃料を再処理して再び原発で使う「核燃料サイクル」が事実上破綻している現実から目を背けている。
青森県に建設中の再処理工場はトラブル続きで、当初予定から四半世紀以上たった今も稼働できていない。再処理後に残る「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」の最終処分先の見通しも立たないままだ。問題を先送りしては、国民の不信が募る一方だ。
原発の建て替え・新増設も現実味を欠く。安全対策費の膨張で建設費は1基当たり1兆円規模に上る。電力業界は電気代に転嫁できる仕組みを求めるが、家庭や企業の理解が得られるだろうか。
能登半島地震をきっかけに、原発被災時の住民避難の難しさが改めて浮き彫りになった。防災対策の強化を掲げる首相には、住民の不安に応える責任がある。
立憲民主党は党綱領で「原発ゼロ社会」を掲げながら、再稼働を容認する。野田佳彦代表の現実路線の反映だ。当面は石炭火力発電の廃止など脱化石燃料を優先しつつ、再生可能エネルギー導入を急ぐ。2050年までに全ての電力を再生エネで賄うことを目指す。
ただ、天候に発電量が左右される再生エネ一辺倒では電力不足に陥る懸念がある。実現に向けて公的資金50兆円を投入するというが、具体的な財源は示していない。
地震大国で原発を使うリスクをどう考えるか。電源シフトに伴う負担を国民にどこまで求めるのか。与野党は暮らしや経済に大きな影響を及ぼすエネルギー政策のあり方を骨太に語るべきだ。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月21日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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