《社説②・10.22》:衆院選2024 問われる防災体制 議論通じて機能高めたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・10.22》:衆院選2024 問われる防災体制 議論通じて機能高めたい
日本は世界有数の災害大国である。頻発する地震や豪雨への日々の備えから復旧・復興まで、取り組みの強化が求められている。
過去の災害で浮き彫りになったのは、対策が不十分で、住民本位の視点が欠けていたことだ。
避難所の劣悪な環境が典型例だ。雑魚寝を強いられ、プライバシーが守られないケースが目立つ。衛生面の管理なども行き届かず、災害関連死を招いている。
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老朽化した水道やガスなどインフラの更新も喫緊の課題だ。耐震性が低いために壊れやすく、復旧までに時間がかかる。生活再建への支障となっている。
長年の課題だが、財政難などがネックとなり、設備の更新や避難先の環境改善に手が回っていない。政府は課題を洗い出し、支援策を拡充する必要がある。
石破茂首相は、防災対策の司令塔となる「防災庁」の設置準備を始めると表明した。各党も選挙公約で防災対策の重要性を訴える。
現在は、内閣府が防災行政を所管し、約150人の担当者が調査・研究、他省庁との調整などに当たっている。だが出向者が多く、2~3年で交代するため、専門職員が育ちにくい。
相次ぐ災害への対応で過重業務となっており、予算、人員の両面でのてこ入れが急務である。
防災庁にどれだけの権限を持たせるのかといった制度設計はこれからだ。各省庁の防災部門と業務が重なれば「屋上屋を架す」ことになりかねないとの批判もある。現行体制の課題を検証することが出発点となる。
国内では、多数の死傷者が予測されている南海トラフ地震や首都直下地震が、いつ発生しても不思議ではない。
ひとたび起きれば、被害は都道府県の枠を超えた甚大なものになる。急速な高齢化と過疎化が進む地方では、支え合いの体制が脆弱(ぜいじゃく)になっている。人口が集中する都市部は混乱が避けられない。
広域避難の調整など政府が果たすべき役割は大きい。自治体や民間との連携も重要だ。
国民の生命と財産を守ることは、政治の責務である。選挙戦を通じて有権者も意識を高め、社会全体で防災力を向上させる契機としたい。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月22日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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