【社説①・10.29】:石破首相会見 「反省」とは言葉だけか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・10.29】:石破首相会見 「反省」とは言葉だけか
石破茂首相はきのう記者会見し、与党過半数割れとなった衆院選の結果について「真摯(しんし)に受け止め、心底から反省し、生まれ変わっていかなければならない」と述べた。
しかし、焦点となっている裏金事件の実態解明には言及すらせず、大敗の責任をどのように取るかも明確にしなかった。
さらに「現下の厳しい課題に取り組み、国民生活や日本を守ることで、職責を果たしていく」と述べ、今後の政策テーマを語り続けた。
国民が厳しい審判を下したのは、自民党の裏金問題に対する自浄能力のなさに怒り、失望したからだ。それを真摯に受け止めるなら、踏み込んだ対処や改革を表明するのが当然だろう。
言葉ばかりが踊るが、反省がまるで感じられない。首相は歴史的惨敗を喫した選挙結果の重みを理解しなければならない。
会見で首相は「身内の論理、党内の理屈を今後一切排除し、抜本的改革を行う」と述べた。
その上で政策活動費の廃止、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開、政治資金を監視する第三者機関の設置を進めると訴えた。
ただ、こうした改革の方向性は、すでに選挙前から与野党が大筋で一致していたものだ。
問題は裏金がなぜ作られ、何に使ったのかの真相がいまだに判然としていないことにある。改革の本丸と言われてきた企業・団体献金の廃止にも早急に踏み出さなければならない。
与党が過半数を確保していない以上、現状のままでは、予算案や法案の成立の見通しが立ちにくい。
首相は連立の枠組み拡大について「今時点で想定していない」と述べた上で、議席を伸ばした党の主張を「取り入れる」として政策ごとに野党の協力を得る部分連合に期待を示した。
国民民主党や日本維新の会との連携が念頭にあるのだろう。だが両党は選挙戦で自民党の政権運営を激しく批判してきた。
国民に分かりにくい密室での数合わせが横行するようでは、政治不信を強めるだけだ。政策協議をするなら、公開の場で堂々と進めなければならない。
一方の立憲民主党も特別国会での首相指名選挙をにらみ、国民民主党などに連携を求める考えだ。今後は選挙で訴えてきた政権交代をいかに現実のものとするかが問われる。
これまでの自民1強体制とは違い、過半数を占める政党がない国会は、丁寧な合意形成が前提となる。与野党は熟議の重要性を肝に銘じるべきである。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月29日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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