【社説・10.29】:【自公過半数割れ】再出発する覚悟が要る
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.29】:【自公過半数割れ】再出発する覚悟が要る
与党の自民、公明両党に有権者の厳しい審判が下された。政権運営に「ノー」を突きつけられたといっても過言ではないだろう。
第50回衆院選(定数465)は自公が過半数(233)を割り込み、計215議席の獲得にとどまった。自公の過半数割れは政権が旧民主党に交代した2009年以来となる。
野党にも過半数を獲得した党はないが、野党第1党の立憲民主党のほか、国民民主、れいわ新選組の各党が大きく躍進した。
与党惨敗の最大の原因は、自民の派閥裏金事件やそれへの甘い対応である。「政治とカネ」の問題にけじめをつけられない体質が改めて浮き彫りになった。国民の間に強い失望や憤りが広がった。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題への不信も消えていない。石破茂政権や与党は選挙結果を重く受け止める必要がある。
今月就任した石破首相は早々の解散総選挙に打って出た。裏金事件への批判が強まる中、新政権の「ご祝儀相場」で議席維持を図る狙いがあったとみられる。
しかし、あまりに国民を甘く見ていた。自民が裏金事件で非公認とした候補が代表を務める党支部に対し、公認候補の支部と同額の2千万円の活動費を支給していたことが選挙戦終盤に判明した。
党執行部は、候補者ではなく、党勢拡大のための党支部への支給だと釈明した。だがタイミングといい、金額といい、「裏公認」との批判が出たのは無理もない。
石破首相の就任後の変節ぶりも批判された。石破首相は衆院選の勝敗ラインを与党で過半数確保と低く設定していたが、結局、獲得議席はそれにも及ばなかった。
裏金事件にしても、旧統一教会問題にしても、さかのぼれば「自民1強」と呼ばれた安倍晋三政権時代の影響が大きい。数の力によるおごりや緩みが、いまの事態の背景にあったのではないか。
今回の選挙はそんな自民に結果的に追随してきた公明にも厳しい評価が下された。自公が信頼を取り戻すには意識や体質を改善し、再出発するぐらいの覚悟が要る。
自公の過半数割れにより今後、政局が大きく動く可能性がある。
石破首相は辞任を否定し、政権続投の構えを示している。少数与党による不安定な政権運営を避けるなら、野党のどこかと手を結び、連立の枠を広げる必要がある。
一方の野党も、政策や方向性の違いから、政権交代に持ち込むのは簡単ではないだろう。いずれにしても今後の政権運営は多党間での政策論議が欠かせない。
いま国政は物価高騰や少子高齢化の対策、安全保障、防災など懸案が多い。多様な意見がある中、数の力で政策を強引に推し進めるのではなく、「言論の府」である国会で深い議論を交わし、民意をより反映する転機にしなければならない。
それが政治不信の払拭や政治離れの回避にもつながるはずだ。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月29日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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