【社説・11.25】:経済対策 生活向上へ真摯な論戦を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.25】:経済対策 生活向上へ真摯な論戦を
政府は、低所得世帯への給付金などを柱とした経済対策を閣議決定した。必要な経費として2024年度の一般会計補正予算案に13兆9千億円程度を計上する。
予算規模は23年度の約13兆2千億円を上回る。無駄を省き、物価高騰に苦しむ国民の暮らしを真に支える施策となるよう、与野党には真摯(しんし)な国会論戦を求めたい。
経済対策には、年収103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」の引き上げが明記された。今後はその引き上げ幅や財源が議論の焦点になる。
「年収の壁」引き上げでは、先の衆院選で躍進した国民民主が最低賃金の上昇率に基づき、178万円への引き上げを要求しているが、税収減を懸念する与党は慎重姿勢だ。政府与党内では一定所得以上の富裕層への適用を制限する案や、地方税の個人住民税を国税の所得税と分離して議論し、非課税枠を引き上げる場合は所得税より幅を小さくする案も浮上している。
地方自治体には税収減への懸念も根強いが、衆院選で手取り増を公約にした国民民主は議席を大幅に伸ばした。共同通信社の世論調査でも「年収の壁」見直しには69・9%が賛成している。
8、9月の実質賃金は前年同月比で減少している。経済対策には最低賃金全国平均1500円への引き上げ目標や賃上げ促進などを盛り込んだが、高止まりする物価に追い付いていない現状が続く。
減収分の補塡(ほてん)は検討すべきだが、政府は国民が求める施策に向き合うべきだ。一定条件で社会保険の加入が必要になる「106万円の壁」なども合わせて議論し、多くの国民が手取り増を実感することで消費喚起につながり、景気回復に伴う税収増につながる可能性もある。
経済対策では、住民税が非課税となっている低所得世帯を対象に3万円を支給することや、ガソリン代を抑える補助金の継続、電気・都市ガス代の補助も再開する。地方創生では交付金を倍増する方針を掲げた。
物価高の影響が大きい低所得世帯への手厚い支援は評価できよう。しかし電気・都市ガスの補助金は終了と再開を繰り返している。ガソリン代補助も年内を期限としていた。地方創生では、14年のスタート以降も地方からの人口流出、東京一極集中には歯止めがかからない。補助金の効果やこれまでの地方創生の取り組みの効果を検証し、次の施策につなげなければ、ばらまきとの批判は免れない。
ガソリン減税については「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」とした。ガソリン税には、暫定税率廃止に伴い創設された特例税率が含まれているほか、消費税も課せられており「二重課税」の指摘もある。「年収の壁」とも合わせ、税の在り方について議論すべき時期に来ていると言えよう。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月25日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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