《余録・12.03》:「クマのプーさん」の誕生は…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.03》:「クマのプーさん」の誕生は…
「クマのプーさん」の誕生は約1世紀前。ロンドン動物園のクロクマ、ウィニーを気に入った幼いクリストファー・ロビンがテディベアにその名をつけた。そこから着想を得て父親が書いた物語が「ウィニー・ザ・プー」(1926年)だ
▲今では考えられないが来園者はウィニーの背中に乗ることもできたそうだ。元々カナダの獣医師が育てたというから人になついていたのだろう。事故でもあれば世界的キャラクターは生まれなかったかもしれない
▲近年、住民がクマに襲われる被害が相次ぐ秋田県でスーパーにクマが侵入した。現場は秋田市の市街地。店員にケガをさせ、商品の肉を食べて2日間も立てこもった末に箱ワナで捕獲された
▲クマは元来、臆病で人を避ける。人を恐れぬ「アーバンベア」の仕業かと疑う。だが「秋田で何が起こっているか」を調べた自然写真家の永幡嘉之(ながはた・よしゆき)さんは著書で、能動的に人里に定住するクマはおらず、生態が変化した兆候はないと指摘する
▲クマ被害が増えた理由はエサの凶作や森林の変容、人の生活の変化など複合的だ。対策には駆除とともにクマが人里に出ないで暮らせる森林の環境改善が必要という(永幡嘉之著「クマはなぜ人里に出てきたのか」旬報社)
▲冬ごもりの時期に出没するのは温暖化の影響かもしれない。「プー」は本来、ロビンが白鳥につけた名という。秋田・雄物川流域に飛来する白鳥は「冬の使者」。白鳥が姿を現すとクマの姿が消える自然のサイクルを取り戻せないものか。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2024年12月03日 02:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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