選択的夫婦別姓制度の実現を求める札幌市の佐藤万奈さん(37)と西清孝さん(32)は、新しい年を迎え、期待と不安が相半ばしている。昨秋の衆院選で導入を掲げる党が議席を伸ばした。国会で議論が進む可能性がある一方、慎重論も根強いことが気がかりだ
大通公園を歩く佐藤万奈さん(左)と西清孝さん=札幌市中央区で2024年11月3日午前11時39分、後藤佳怜撮影
▲医療専門職の2人は2019年に結婚し、佐藤さんは不本意ながら改姓を受け入れた。職場では、書類からも名札からも「佐藤万奈」の名が消えていく。旧姓で呼んでもらうよう頼んだが、上司に「どうして、こだわるの」と言われた
選択的夫婦別姓制度の早期実現に向けて意見交換をする野田聖子元総務相(左から2人目)や辻元清美参院議員(右端)ら=東京都千代田区で2024年12月4日午後0時35分、町野幸撮影
▲ストレスが積み重なって心身の調子を崩し、適応障害と診断された。やりがいのある仕事だったが、退職を余儀なくされた。別姓を選ぶことができたら、嫌な思いをせずに済んだ。結婚も、もっとうれしいと感じられたはずだ。悔しさが募った
▲「恨んでるよ」。そう言われ、西さんも妻が抱えていた苦しみに気づいた。婚姻届を出した9カ月後、「ペーパー離婚」して事実婚となった
▲夫婦同姓を義務づける現行制度を維持すべきだと主張する人は「家族の一体感」を理由に挙げる。姓を変えたくないのは「わがままだ」となじる声すらある。しかし、個人の尊厳に関わる問題であり、人権意識が問われている
▲法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を答申してから29年になる。自民党が党内の保守派に配慮し、たなざらしにしてきたが、石破茂首相は「議論の頻度を上げる」と述べた。今年こそ、佐藤さんたちの悲願に応え、結論を出すべきだ。
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