【社説①・01.10】:大麻使用に厳罰 若者への広がりを断と
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.10】:大麻使用に厳罰 若者への広がりを断と
大麻は有害で依存性がある薬物だ。法改正を機に若者へのまん延を防ぎたい。
改正された大麻取締法と麻薬取締法が施行され、禁止されていた大麻の所持や譲渡、無許可栽培に加え、使用罪が新たに設けられた。
大麻と大麻由来の成分(テトラヒドロカンナビノール)を麻薬と位置付け、使用すれば7年以下の懲役を科す。5年以下の懲役だった単純所持罪は、7年以下の懲役に厳罰化された。使用を思いとどまらせる効果に期待したい。
従来は、家宅捜索で所持を裏付ける大麻が見つからないと立件は困難だった。今後は所持していなくても使用が疑われる場合は尿を鑑定し、使用罪で立件することが増えるとみられる。
法改正は大麻の検挙者増加に対応するためだ。
厚生労働省によると、大麻に関する2023年の検挙者は過去最多の6703人だった。前年より千人以上増え、初めて覚醒剤の検挙者を上回った。
このうち20代以下は7割を超える4887人で、14年の約6倍になっている。低年齢化は深刻で、中高生が251人含まれている。福岡県でも同様の傾向だ。
近年は大学の運動部の学生が大麻を所持した疑いで逮捕され、部が活動停止や廃止に追い込まれる事件が相次ぐ。
若者の中には「体に害はなく、すぐにやめられる」という思い込みもあるが、明らかな誤解である。
大麻に含まれる成分は中枢神経に作用し、乱用すると幻覚や思考力低下、記憶障害、運動失調を引き起こす。特に成長期の脳への影響が大きいという。
交流サイト(SNS)で手軽に買えることもまん延の要因だ。隠語で取引され、抵抗をあまり感じないようだ。捜査機関は流通経路を解明し、売人や密売組織を摘発してもらいたい。
大麻が合法な国から、大麻成分が入ったクッキーやチョコレートなどの加工品が密輸される事例もある。
大麻はゲートウエー(入り口)ドラッグと呼ばれる。興味本位から一度手を出してしまえば、より刺激と依存性の強い薬物を求め、乱用につながる恐れがあるからだ。
影響は健康被害にとどまらない。人生を狂わせ、家族や周囲を苦しめる。
若年層に対する教育、啓発に改めて力を入れなくてはならない。大麻の危険性が正しく伝わるように学校での取り組みが必要だ。巧みな言葉で使用や購入を誘うSNSに注意し、自分の身は自分で守る意識を高めてほしい。
依存症の治療をはじめ、乱用者が立ち直るための支援も充実させるべきだ。
今回の法改正で、大麻草から製造された医薬品は安全性と有効性が認められれば使用可能になった。患者団体の要望を踏まえたもので、適切に活用したい。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月10日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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