【社説・12.03】:豪で子どもSNS禁止 日本でも真剣な議論必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.03】:豪で子どもSNS禁止 日本でも真剣な議論必要
オーストラリアで16歳未満の子どもの交流サイト(SNS)使用を法律で禁止することが決定された。子どもを有害コンテンツから保護することが目的で、国家レベルでの一律禁止は世界初だ。日本でも、SNSが暴力や自殺、違法薬物使用を誘発し、児童ポルノ被害や学校でのいじめの温床になっていると指摘されてきた。さまざまな対策がとられているが、被害は増えている。より有効な対策は何か、真剣な議論が必要だ。
オーストラリアの法律は、16歳未満の子どもがアカウントを作成・保有することを防ぐ措置を事業者に義務づける。深刻な違反には最大で約50億円の制裁金を科す。保護者や子どもへの罰則はない。教育に役立つとされたユーチューブなどは除外された。
年齢確認の方法は決まっておらず、年齢確認を通じ事業者が個人情報を蓄積しかねないとの批判もある。実効性への疑問もあり、施行までの1年間に議論されるのだろう。
各国で規制が進んでいる。フランスでは昨年6月、15歳未満は保護者の同意がないと使用できないとする法律が議会で承認された。英国でも同10月、有害コンテンツへのアクセス防止策を事業者に義務づけ、違反に制裁金を科す法律が成立した。米フロリダ州やニューヨーク州も年齢制限、保護者の同意など法律で定めている。
日本では、こども家庭庁が中心となって「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ」を立ち上げた。主要国の事例を参考にして課題を整理する段階だ。
警察庁によると、SNSを通じて面識のない被疑者と接触する「SNSに起因する事犯」の被害児童数は、2019年まで増加し続け、その後横ばい状態で22年は1732人だった。中学生と高校生が大半だが、小学生が増えており114人だった。
県内でも、SNSを通じていじめられ不登校になるケースがある。性被害に遭う事犯も発生しており、SNSを介することで被害者が低年齢化することが懸念されている。
県警は被害の未然防止のためにサイバーパトロールを実施している。SNSに犯罪性がうかがえる書き込みがあると「こちらは沖縄県警察少年課です」と警告を貼り付けている。警告件数は22年1年間で717件あり前年から倍増した。その7割が、児童らが書き込んだ可能性があった。
一律の年齢制限には、実効性のほか、子どもの表現の自由の面から批判があろう。全面禁止より「良い面と悪い面を子どもに教育する方が効果的だ」というオーストラリアの専門家の意見もある。
現に被害がある以上、より有効な対策が必要なことは確かだ。法律の検討、事業者への対策義務づけ、警察の対応に加え、学校での教育の徹底、保護者に指導監督を促すことが一層求められている。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月03日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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