【社説②・12.31】:国際/紛争と社会の分断広がる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.31】:国際/紛争と社会の分断広がる
戦争や紛争が拡大し、世界情勢に大きな影響を及ぼす国や地域で選挙が相次いだ。民主主義のもろさが露呈した1年でもあった。
11月の米大統領選でトランプ氏が復活を果たした。来年1月に就任する。関税などを武器に「自国第一」を推し進める姿勢を鮮明にしている。ロシアでは2020年の憲法改正で大統領の多選制限が骨抜きにされ、今年3月の大統領選でプーチン氏が5度目の当選を決めた。
ロシアによるウクライナ侵攻は3年目に入った。北朝鮮がロシアに派兵するなど、アジアの不安定化にもつながりかねない事態だ。イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの攻撃をいまだに止めない。停戦と平和への道筋をどうつけるのか、日本を含む国際社会が向き合うべき大きな課題である。
長引くインフレや経済格差の拡大、移民増加への不満などを背景に、内向き志向が広がり、社会の分断が深刻化した。
6月の欧州議会の選挙、続く7月のフランスの総選挙では、反移民を掲げる極右や右派が勢力を伸ばした。米大統領選の最中にはトランプ氏が銃撃を受けた。民主主義国のリーダーを自任してきた国で起きた政治家の暗殺未遂事件は、世界に衝撃と深い懸念を与えた。
12月に入って欧州政治の混迷が深まった。ドイツで首相の信任案が否決され、来年2月に19年ぶりの解散総選挙が実施される。フランスでは62年ぶりの内閣不信任で総辞職した。欧州のウクライナ支援に影響を及ぼす可能性がある。
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は「民主主義を守る」との名目で戒厳令を出し、民主主義を破壊しようとした。国会は弾劾訴追案を可決したが、尹氏は徹底抗戦の構えを見せる。混乱は長引きそうだ。今後、米国と中国の対立激化も予想される。日米韓の連携維持に、日本は一層の外交努力を重ねる必要がある。
ノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会に贈られた。世界各地に戦闘が拡散し、核使用が公然と語られる中、「核なき世界」の実現に向けた行動を促すメッセージである。唯一の戦争被爆国である日本こそが、その先頭に立たねばならない。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月31日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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