信頼を徐々に回復し、急成長する経済は地域の模範となった。実を結んだ日本外交の核心は「平和による力」だったといえよう。
だが、戦後80年を迎え、日本を取り巻く状況は様変わりした。
アジア経済が底上げされるにつれ、日本の存在感は相対的に低下した。中国が台頭し、東南アジア諸国との関係を深めている。
トランプ氏の再来は、さらなる波乱要因となろう。「米国第一」を掲げ、軍事力を背景にした「力による平和」を旗印にする。対峙(たいじ)するのは中国だ。
すべての輸入品に10%の追加関税をかけ、中国には60%超も辞さないと脅す。自由貿易のルールに反する政策だ。
貿易を縮小させ、国際経済に甚大な影響を与える。中国を最大の貿易相手国とする日本も打撃を被るだろう。
米中対立の激化が予想される今年、世界の関心がアジアに注がれるのは間違いない。難局に日本はどう対処すればいいのだろうか。
日米同盟を基軸に、中国に向き合う姿勢は変わらない。ただし、大国がにらみ合う中で米国一辺倒では地域の亀裂を深めかねない。
米国の身勝手な行動を押しとどめることが日本の役割だ。
◆米中対立緩和に関与を
日本は「トランプリスク」をすでに経験している。1期目に発動した鉄鋼などへの高関税政策は日本など同盟国も標的となった。
2期目も繰り返されるなら、自由経済の規範は骨抜きになる。米国にも不利益になる。石破茂首相はトランプ氏を説得すべきだ。
米国か中国かの選択を迫られることは、東南アジア諸国にとって最も避けたい事態だろう。日本に橋渡し役を求める声も出ている。真剣に受け止める必要がある。
地域の安定に有用なのが、多国間協議だ。日本は経済と安全保障の両面で地域の枠組み作りを主導してきた歴史がある。
米中露が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)の礎を築き、北朝鮮も入る東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の結成に動いた。
日中韓首脳が定期的に会う仕組みも作り、米国不在の東アジア首脳会議にも参加した。
同盟関係にある日米でも国益は異なる。地域主義を重視する日本がアジアで果たす役割は今後も変わらず重い。
世界が軍備拡張に走る中、「力による平和」は常に武力衝突のリスクをはらむ。一方で、「平和による力」だけでは限界がある。重要なのは、両者のバランスをとることだ。
今後4年、トランプ氏が意のままに行動するのを許すなら、世界の秩序は回復できない状況に陥る。それを避けるために日本は外交力を発揮する時だ。
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