【社説・11.16】:あす投票/県政再生へ冷静な判断を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.16】:あす投票/県政再生へ冷静な判断を
前知事の失職に伴う兵庫県知事選は、あす投開票を迎える。選挙戦はSNS(交流サイト)での舌戦が過熱し、真偽不明の情報や誹謗(ひぼう)中傷が飛び交う異様な展開になっている。
「何が本当なのか分からなくなった」と戸惑う有権者の声も聞こえてくる。根拠のない発言や偽・誤情報に、投票行動が左右されることがあってはならない。いま一度、今選挙の出発点を整理しておきたい。
今年3月、当時の西播磨県民局長が斎藤元彦前知事らのパワハラ疑惑などを告発した文書を報道機関などに配布したことに端を発する。前知事は、真実相当性がない誹謗中傷だとして県民局長を告発者と特定し、解任した。元県民局長は改めて県庁内の窓口に公益通報したが、県はその調査を待たず、5月に内部調査に基づき停職3カ月の懲戒処分とした。元県民局長は7月に自死した。
一方、県議会は6月、調査特別委員会(百条委)を設置し、問題の調査を始めた。9月には半年におよぶ県政混乱の責任と「知事の資質」を問い、全会一致で斎藤氏への不信任を決議した。斎藤氏は失職を選び、自らも出直し選に打って出た。これが異例の知事選に至る経緯である。
文書を巡る県の対応は適切だったのか。百条委で公益通報者保護法に詳しい複数の専門家は「文書配布は外部公益通報に当たる」「告発者の探索や不利益な取り扱いは禁じられている」と違法性を指摘し、斎藤氏は「法的に問題はない」と反論した。選挙戦では、斎藤氏以外の複数の候補者が県の対応を批判し、制度運用の改善を訴えている。
斎藤氏によるパワハラの有無は、百条委や、弁護士でつくる第三者委員会が調査中で結論は出ていない。百条委の県職員アンケートでは140人が「目撃、経験などで実際に知っている」と答えた。斎藤氏は当初「パワハラかどうかは百条委や第三者委が判断すること」としていたが、選挙戦では「パワハラはなかった」と主張する場面も見られる。
判明した事実と、調査中の問題、説明されていない疑惑を見極めなければならない。県議会は選挙後も全容解明に努める責任がある。
各陣営の活発なSNS活用の裏で他陣営への攻撃や誤情報の拡散は加速するばかりだ。14日に稲村和美・前尼崎市長への支持を表明した県内29市中22市の市長は会見で、「正しい情報が伝わっていない懸念がある」と言及した。
混乱と対立を収拾し、県職員や市町、なにより県民との信頼関係を立て直す重責を誰に託すか。異例ずくめの知事選を県政の再生につなげるため、冷静に判断し、悔いのない選択をしたい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月16日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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