【社説②】:札幌圏の大雪 生活守る手だて再考を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:札幌圏の大雪 生活守る手だて再考を
札幌圏を直撃した記録的な大雪では、鉄路に加え道路でも除排雪が追いついていない。通勤通学や通院、買い物の足の乱れ、ごみ収集の遅れなど市民生活に多大な混乱を生じさせている。
6日昼までの24時間降雪量は過去最多の60センチに達した。このうち24センチが正午までの3時間に集中し、日中から渋滞が発生していた。
札幌市は原則として交通量の少ない夜間に除排雪を行っている。昼間に十分な作業をせずに混乱を増大させた可能性はないか。
市が雪害対策連絡会議を開催したのは週明けの7日午後になってからだ。初動の遅れも否めまい。
公共事業費の削減などに伴う業者の人員減も、機動的な除排雪ができない一因となっている。
だが人口200万人近い大都市でこれほどの豪雪地帯は、世界でも珍しいとされる。市民の安全で安心な冬の生活を支えることは常に行政の大きな使命である。
札幌市は今回の対応を検証し、弾力的で効果的な除排雪体制を再検討してもらいたい。
札幌市の推計では、市内で除雪作業車両を操作するオペレーターは2017年度に2056人いたが、22年度には約10%減の1857人に減る。安全確保にかかわる作業員も減少傾向にある。
しかし、そのしわ寄せを市民生活に及ぼしてはならないだろう。
札幌市は今回の大雪の緊急対策として、住宅地につながる生活道路を対象に町内会などと共同で行う「パートナーシップ排雪」の実施量を通常の7割にとどめた。
幹線道路やバス路線、通学路などの除排雪を優先するためというのがその理由だ。
これに対して市民からは「見通しが悪くなる」と懸念の声が出ている。高齢者など交通弱者の安全が確保されるのか、不安を抱くのは当然だろう。
個別の状況を注意深く点検し、適切な除排雪を進めるべきだ。
人員減を補う手段として新技術の活用も欠かせない。
開発局は情報通信技術(ICT)を活用して除雪車の操作を安全に行う実証実験や研究を進めている。道や札幌市とも連携し、本格導入を急いでほしい。
住宅の敷地から道路への雪だしは行わず、マイカーでの不要不急の外出は自粛するなど、市民も協力できるところは協力したい。
札幌市は今回、開発局の協力を得て雪の堆積場の拡充を急きょ進めた。平素から余裕を持った計画作りが求められる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月11日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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