【社説①】:投資詐欺広告 巨大ITは被害を放置するな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:投資詐欺広告 巨大ITは被害を放置するな
偽の広告や中傷まがいの口コミ情報が、インターネット上に拡散されている。これ以上、被害が広がらないよう、巨大IT企業は、責任を持って対策を講じるべきである。
SNS上で、著名な経済アナリストや実業家などになりすまし、投資を呼びかける偽広告の問題が深刻化している。米SNS大手メタが運営するフェイスブックやインスタグラムで、こうした広告が数多く確認された。
警察庁によると、偽広告を含む「SNS型投資詐欺」の被害は、昨年1年間で2271件、約278億円に上っている。
4月には、70歳の会社役員の女性が投資の偽広告を見て、著名な経済アナリストらを装った人物に約7億円をだまし取られていたことが判明した。同様の手口で、老後の資産を失った人もいる。
著名人の信用力を利用した悪質な犯罪である。警察は摘発に全力を尽くさなければならない。
被害を防止するには、偽広告の配信停止が不可欠だ。しかし、名前や映像を詐欺に使われた著名人が、メタに削除を求めたところ、「広告が多くて、全てには対応できない」と回答されたという。
あまりにも不誠実な対応だと言わざるを得ない。被害の申し立てがあれば、費用や人員を投じてでも必要な対応をするのが、企業として当然の姿勢ではないか。
メタなどは広告を配信する際、人の目やAI(人工知能)を使った自動検知技術で内容を審査しているという。被害の訴えがあった広告についても、真偽を判定し直し、削除を進めるべきだ。
政府も巨大ITに、対策の強化を強く要求してほしい。それでも対応が不十分なら、偽広告の削除を義務づけるといった法規制も検討すべきだろう。
米グーグルが提供する地図サービス「グーグルマップ」でも問題が起きている。全国の医師らが、自分の病院を非難する口コミをマップ上に書き込まれ、それを放置したなどとして、グーグルに損害賠償を求める訴訟を起こした。
マップには様々な施設が表示され、誰でも自由に投稿できる。医師らは、口コミ欄に「人間扱いされなかった」「頭がいかれている」などと投稿されたという。
グーグルは「不正なレビューは削除している」というが、削除の判断基準が不明確で、時間もかかるという批判が出ている。巨大ITが提供するサービスは、多くの国民が利用している。その重みを自覚しなければならない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月02日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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