■2007/9/7(金)11:07-11:10【天気】台風9号 豪雨強風
【場所】土手崎~三十丁間農道
【種名】アカエリヒレアシシギ40+(1科1種)
【備考】台風10号が直撃した金曜日の午前,早朝5時過ぎに勤務先に到着した。この日は臨時休校。9時頃から職員に巡視に行ってもらう。10時半に今度は自分で行くことにした。約1時間半かけて全ての地区を回った。走行距離は約70km強。帰る途中の吉田側堤防沿いの農道を走っているときだった。強風と豪雨の中,前方の路上に鳥の群れを発見。急ブレーキをかけたが間に合わず,鳥の群れに突っ込んでしまった。40羽以上いたうち,ほとんどは車に気づいて逃げたが,何しろ逆風の強風と豪雨のため,容易に飛べず,6羽ほど車にぶつかった。ぶつかった瞬間スズメではなくアカエリヒレアシシギ幼羽とすぐわかった。飛んだ30羽以上の群れは吉田川堤防上を越えて飛んでいったが,残りの6羽のうち,1羽は内臓破裂で即死,残り5羽が路上でショック状態になっていた。即死した個体は土手の草をかき分け穴を掘り,そこに埋葬して手を合わせた。残りの5羽を急いで両手に乗せて,トランクに入れ,職場に戻った。段ボール箱に入れ蓋をしてしばらく安静にさせる。1時間ほどして開けてみると,5羽のうち1羽が足が伸びきっていて,普通に立てない状態だった。残り4羽を嵐の中だが放鳥するため,風雨が凌げるところがないかと探していると,何と『飛翔』と書かれた碑があった。今まで碑があることは分かっていたが,あまり碑文までは意識していなかった。その碑の脇の草地に4羽を置くと,3羽はすぐに飛び立っていった。1羽はまだ無理そうだったので,重傷の1羽と段ボール箱に入れておいた。1時間ほどして箱を開けてみると,だいぶ回復して箱の中を歩き回っていた。ただ羽ばたくが,まだすぐには飛んでいけそうにない。足が伸びきった個体もそのままで,これはたとえ飛べても落鳥は時間の問題と悟った。元気な方を放してみると,雨が吹き付ける水たまりで盛んに水を飲んでいた。これならいけそうだ。それからまた1時間して放鳥することにした。1時間後箱を開けると,まだ換羽が進んでいない褐色の幼羽が多く残る個体は,目を閉じて死んでいた。水を飲ませればよかったと悔やんだが仕方がない。もう1羽を同じく「飛翔」の石碑前で放鳥すると,強風と豪雨に逆らってヘリコプターのようにゆっくり風をとらえて飛んでいった。その時だった。上空から「ピュイ」という声が聞こえ,見上げると前に放鳥した1羽が飛んでいた。するとプールの脇から飛んできたもう2羽が合流し,そして最後の1羽も一緒になり,風に向かって4羽で南西方向に飛んで行った。最後の1羽が放鳥された3時間の間,先に放鳥された3羽が待っていてくれたのだ。思わず感動して涙が出そうになった。そして,死んだ1羽を「飛翔」の碑の後ろに土を掘って埋め,合掌したのだった。台風が勤務日にもたらしたのは,アカエリヒレアシシギの群れとの悲しい遭遇,2羽の落鳥(させてしまった),そして,台風の最中,風雨に負けず飛んでいった感動的な彼らの姿だった。合掌。
【写真】
■アカエリヒレアシシギ幼羽,左の個体は冬羽に換羽がだいぶ進んでいるが,右は遅れている。この個体は結局落鳥した。
Copyright(C)2007 Shigenobu Aizawa All Rights reserved.
【場所】土手崎~三十丁間農道
【種名】アカエリヒレアシシギ40+(1科1種)
【備考】台風10号が直撃した金曜日の午前,早朝5時過ぎに勤務先に到着した。この日は臨時休校。9時頃から職員に巡視に行ってもらう。10時半に今度は自分で行くことにした。約1時間半かけて全ての地区を回った。走行距離は約70km強。帰る途中の吉田側堤防沿いの農道を走っているときだった。強風と豪雨の中,前方の路上に鳥の群れを発見。急ブレーキをかけたが間に合わず,鳥の群れに突っ込んでしまった。40羽以上いたうち,ほとんどは車に気づいて逃げたが,何しろ逆風の強風と豪雨のため,容易に飛べず,6羽ほど車にぶつかった。ぶつかった瞬間スズメではなくアカエリヒレアシシギ幼羽とすぐわかった。飛んだ30羽以上の群れは吉田川堤防上を越えて飛んでいったが,残りの6羽のうち,1羽は内臓破裂で即死,残り5羽が路上でショック状態になっていた。即死した個体は土手の草をかき分け穴を掘り,そこに埋葬して手を合わせた。残りの5羽を急いで両手に乗せて,トランクに入れ,職場に戻った。段ボール箱に入れ蓋をしてしばらく安静にさせる。1時間ほどして開けてみると,5羽のうち1羽が足が伸びきっていて,普通に立てない状態だった。残り4羽を嵐の中だが放鳥するため,風雨が凌げるところがないかと探していると,何と『飛翔』と書かれた碑があった。今まで碑があることは分かっていたが,あまり碑文までは意識していなかった。その碑の脇の草地に4羽を置くと,3羽はすぐに飛び立っていった。1羽はまだ無理そうだったので,重傷の1羽と段ボール箱に入れておいた。1時間ほどして箱を開けてみると,だいぶ回復して箱の中を歩き回っていた。ただ羽ばたくが,まだすぐには飛んでいけそうにない。足が伸びきった個体もそのままで,これはたとえ飛べても落鳥は時間の問題と悟った。元気な方を放してみると,雨が吹き付ける水たまりで盛んに水を飲んでいた。これならいけそうだ。それからまた1時間して放鳥することにした。1時間後箱を開けると,まだ換羽が進んでいない褐色の幼羽が多く残る個体は,目を閉じて死んでいた。水を飲ませればよかったと悔やんだが仕方がない。もう1羽を同じく「飛翔」の石碑前で放鳥すると,強風と豪雨に逆らってヘリコプターのようにゆっくり風をとらえて飛んでいった。その時だった。上空から「ピュイ」という声が聞こえ,見上げると前に放鳥した1羽が飛んでいた。するとプールの脇から飛んできたもう2羽が合流し,そして最後の1羽も一緒になり,風に向かって4羽で南西方向に飛んで行った。最後の1羽が放鳥された3時間の間,先に放鳥された3羽が待っていてくれたのだ。思わず感動して涙が出そうになった。そして,死んだ1羽を「飛翔」の碑の後ろに土を掘って埋め,合掌したのだった。台風が勤務日にもたらしたのは,アカエリヒレアシシギの群れとの悲しい遭遇,2羽の落鳥(させてしまった),そして,台風の最中,風雨に負けず飛んでいった感動的な彼らの姿だった。合掌。
【写真】
■アカエリヒレアシシギ幼羽,左の個体は冬羽に換羽がだいぶ進んでいるが,右は遅れている。この個体は結局落鳥した。
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