「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          エジプト革命60周年と「ムスリム同胞団」

2012-06-26 05:45:44 | Weblog
”アラブの春”の結論としてエジプトでは決選投票の結果、イスラム主義組織「ムスリム同胞団」が推すムハンマド.モルシ氏が大統領に選ばれた。1950年代から60年代にかけて新聞社で中東問題を担当していた僕にとっては懐かしい名前だ。ナセル、サダト、ムバラク三代の軍人出身の大統領時代の政治の中ですっかり忘れられかけていた。

60年前の1952年7月23日、エジプトではファルーク王朝打倒のクーデターが起こり、ナセル(初代大統領)らの若手自由将校団が権限を握った。この革命を支持し共闘したのが「ムスリム同胞団」であった。しかし、革命成功後自由将校団のソ連(当時)寄りの社会主義政策に反対してナセル暗殺計画(未遂)を起こし、以来エジプトの政治の表舞台からは消えていた。

当時を想い起こすと、アラブ世界は1956年の「スエズ戦争」の勝利もあってナセルの名前はアラブ統一の盟主として崇められた。ナセリズムが澎湃としてアラブ世界を動かし、58年にはイラクでもハシミテ王国が倒れ、同じ年、エジプトとシリアが合邦して「アラブ連合共和国」(UAR)が出来、さらには62年にはイエメン王国も倒れ、UARと同盟を結んだ(その後シリアは61年離脱)

この時代もイスラム内のスンニ派とシーア派との対立もあったのであろうが、あまり武力衝突はなかった気がする。いわんやアルカイーダのようなイスラム原理主義はなかった。人々のエネルギーは宗主国からの独立、そしてその傀儡の王政打倒にあったのだろう。「ムスリム同胞団」の政治は、それほどイスラム色の強いものようにみえないが、多宗教国家である。今後の舵取りが注目される。