「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

在イエメン大使館閉鎖とODAの浪費

2015-02-17 05:39:04 | Weblog
国内の政治混乱から無政府状態が続くイエメンの在日本大使館が閉鎖され、大使ら職員5人がカタールへ退避した。イエメンでは、すでに隣国サウジアラビアやUAE(アラブ首長連邦)をはじめ米国など主要各国も大使館を閉鎖、居留民を国外へ退避させていた。僕は日本はとっくに大使館を閉鎖したと思っていただけに意外な感じだが、ともかく全員無事に退避出来たのはよかった。しかし、在留邦人の安否はどうなのか。大使館の最後のHPによると、イエメン居住の日本人は直ちに退避勧告に従え”という一項があり、全員の所在がつかみきれていないともとれる。外務省のHPでは昨年11月現在、24人の日本人が居住していた。

イエメンは慢性的国情不安で1984年と94年の二回、同じような政情不安から治安が悪化し、大使館が閉鎖され在留邦人は近隣のジプチへ避難している。この政治混乱は最貧国の宿命で、国内の宗教対立、部族対立がこれに輪をかけている。53年前の1962年、僕も王制崩壊後のイエメンを取材したことがあるが、他のアラブ諸国と違ってこれといった資源もない砂漠の国で、当時は自国貨幣さえなかった。

わが国は1970年代からイエメンにODA援助を続けている。JICA(国際協力機構)は首都サヌアに支所を置き、主として教育、医療援助に対して無償、有償資金を供与し、青年協力隊員まで派遣している。昨年の12月には東京に政府高官10人を招へいして「ODA実施能力強化」というセミナーを開催している。この時点で、イエメンはすでに「アラビア半島のアルカイド」(AQAP)系のテロが続発していた。それから僅か2か月で、大使館の閉鎖である。過去にも同じ事例があるのに、情勢が読めなかったのだろうか。なんのためのセミナーなのか。ODAの浪費ともとれる。