「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

「後進国の未来像」 孫のインドへの研修旅行

2015-08-08 05:06:38 | 2012・1・1
この春外資系の会社に就職した男の孫が昨日、研修旅行でインドのトリバンドラムへ出発した。トリバンドラムといっても一般の日本人には馴染がうすいが、南インドのケララ州都である。最近、観光地として、またIT特区として一部の旅行マニアの間では知られているようだが、比較的アジア通の僕も初めて聞く名前であり、慌ててインターネットで、にわか智識を得た。

僕らの世代はトリバンドラムの名前は知らなくとも、ケララ州の名前を憶えている人がいるかもしれない。昭和32年(1957年)、東西冷戦のさなかインドのこの州に初めて共産党政権が誕生した。毛沢東がモスクワの共産党大会で”東風は西風を圧す””米帝国主義は張子のトラ”と獅子吼していた時代だけに、中立主義のリーダー、インド国内での共産主義政権は世界を驚かせた。

当時、日本では評論家堀田善衛氏の「後進国の未来像」がベストセラーになっていた。昭和30年のバンドンAA会議が開催されてすぐの時代であり、冷戦下にあって後進国(まだ開発途上国という呼称は一般的ではなかった)の将来について関心が集まっていた。最近、僕は本箱のスミから、半世紀前に堀田氏が描いた「後進国の未来像」を読み返してみたが、予測とは異なった道を歩いてきている。

東西冷戦が解消しソ連邦はなくなった。ベルリンの壁は取り壊された。米国とキューバとの関係は正常化された。ケラら州に共産党政権が誕生した時代、まだ日本人のインドへの関心は薄く、今の時代のようにインド料理店がどこにでもある時代ではなかった。個人的にも孫がインドへ研修に行くとは想像もしていなかった。半世紀後の日本は、世界はどうなるか。