
横綱日馬富士の同じモンゴル出身の力士、貴ノ岩に対する暴行事件に端を発した相撲協会の内紛は20日臨時理事会でも解決されず、年を越しそうである。一体全体、公益財団法人のガバナンスはどうなっているのかー。貴ノ岩の親方の貴乃花親方は、協会の理事でありながら協会へ協力姿勢を見せず、肝心の被害者である貴ノ岩は雲隠れしたまま。一方の協会側といえば、電子内容証明のサービスがあるこの世の中なのに大の親方衆二人がパーフォーマンスなのか車でなんども貴乃花部屋を訪れ、会う気のない親方の不誠意だけをマスコミにアッピールだけしている。
明治の末から双葉山時代まで40年、相撲記者をしていた亡父が書いた「相撲争議史」(未刊)の原稿が手元にあるので読み返して見た。その書き出しの文章が今にも通じるので紹介してみる。「相撲の中枢体である相撲協会なるものは、各自利害関係が異なる年寄り力士等の集団で、しかも何より対抗意識の燃える關係上、ともあれば色々と紛争が生ずる」。原稿は400ページ用紙にして53枚。協会の内紛だけでなく、江戸時代の「めぐみの喧嘩」から昭和の初めの春秋園事件まで9項目を書いている。
全文紹介したいところだが、明治44年の烏森事件と昭和8年の春秋園事件が面白い。烏森事件は、力士の待遇改善を要求して一部の力士が新橋の烏森神社境内の建物にたて籠った事件だが、協会側とのやり取りの中で”関取衆は大関横綱にもっと敬意を表すべき”だとか”協会役員は平年寄りを優遇すべきだ”といった要求が出ている。春秋園事件は、同じように力士の待遇と協会の体質改善を要求して出羽の海部屋を中心とした西側(当時は東西制)の関取が協会から分離独立した事件だったが、結局分離した側が経営が成り立たず失敗している。
相撲協会が20日の臨時理事会で、今回の事件に関連した親方、力士に対して、懲罰を含むどのような結論出すのか注目されるが、単なる”ケンカ両成敗”なら将来に同じような禍根を残すことになる。横綱白鵬が千秋楽の土俵で叫んでいたが、”ウミを全部だしきれるか、どうか”だが。