なかなか観る機会がなかった『イーゴリ公』。「韃靼人の踊り〈ポロヴェツ人の踊り〉」は演奏会で何度か聴いていますが、一度観たかった待望のオペラです。ブルガリア国立歌劇場も初めての歌劇場。先日来日してた英国ロイヤルオペラは気の遠くなるようなチケット価格で泣く泣くあきらめたのですが、こちらはなんとか購入可能範囲。ウキウキしながら東京文化会館へ。
一言でいうと、ラストシーンに設定された「韃靼人の踊り」につきました(今回の『イーゴリ公』は劇場総裁プラーメン・カルターロフ氏の演出版で「韃靼人の踊り」はラストに置かれてます)。異国情緒あふれる音楽に合わせて、ブルガリア国立歌劇場バレエ団の面々が踊り乱れる様は、息を飲んで目が離せません。メインのバレリーナさんの長い手足が映える神秘的な踊りや男女のダンサーが入り混じっての華やかな群舞に、完全に別世界に連れて行かれました。色艶やかな衣装にも目を奪われます。素晴らしいラストでした。
実は、このラストシーンに至るまでは、ややモヤモヤ感がありました。王妃ヤロスラーヴナ役のガブリエラ・ゲオルギエヴァ、ガリツキー役のアレクサンダル・ノスィコフ、イーゴリ公のスタニスラフ・トリフォノフ、いずれも図抜けた感はありませでしたが、日本人歌手にはない力強いさ、骨太さを感じるものでした。しかしながら、物語の展開が何をテーマにしようとしているのかわかりにくかったり、オーケストラの不安定さが耳についたりして、どうも完全投入というわけにはいかなかったのです。
が、繰り返しになりますが、最後の「韃靼人の踊り〈ポロヴェツ人の踊り〉」は完全に逆転サヨナラ満塁ホームラン。ブルガリア人とポロヴェツ人の関係は全く分かりませんが、ローカル色一杯の、このバレエとオペラ(コーラス)のコラボは、外国歌劇場ならでは。日本ではなかなか見ることは難しいでしょう。観れてよかった。
舞台装置は特に奇をてらったところはありませんでした。舞台最後方にスクリーンが置かれ、イエス・キリスト等の場に応じたイメージ画像が投影されます。舞台には、王座などの場に応じた造形物が設置されていました。この版は、舞台で見せるよりも、「韃靼人の踊り〈ポロヴェツ人の踊り〉」をラストに持ってくる構成が売りなのでしょう。
《カーテンコールより》
ブルガリア国立歌劇場 ボロディン:歌劇『イーゴリ公』
日時:10月11日(日) 15:00開演(14:15開場)
演目:ボロディン:歌劇『イーゴリ公』全2幕(プラーメン・カルターロフ版)
指揮:グリゴール・パリカロフ
演出:プラーメン・カルターロフ(劇場総裁)
出演:
イーゴリ公:スタニスラフ・トリフォノフ
ヤロスラーヴナ:ガブリエラ・ゲオルギエヴァ
ガリツキー:アレクサンダル・ノスィコフ
コンチャク汗:アンゲル・フリストフ
演奏:ブルガリア国立歌劇場管弦楽団
合唱:ブルガリア国立歌劇場合唱団
バレエ:ブルガリア国立歌劇場バレエ団
Sofia National Opera
Borodin
PRINCE IGOR
Opera in 2 Act
Approximate Running Time: 3hrs.
Oct. 11 (Sun.) 15:00
Tokyo Bunka Kaikan
IGOR: Stanislav Trifonov
YAROSLAVNA: Gabriela Georgieva
GALITSKY: Alexander Nossikov
KONCHAK: Angel Hristov