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ハーバード大学ビジネススクールの教授で、リーダーシップ論の世界的大家であるジョン・コッター氏の最新著作。原題は、”Accelerate: Building Strategic Agility for a Faster-Moving World.”。コッター教授のリーダシップ論は、以前から随分お世話になってきたし、サブタイトルの「大企業がベンチャーのスピードで動く」というのも、旬をとらえた関心のあるテーマなので、期待大きく読み始めた。
本書の課題設定は、「俊敏かつ創造的に行動して機会をつかむには組織としてどうしたらよいか?」(p1)。そして、本書ではその解決方法として「デュアルシステム」を提唱する。デュアルシステムとは「階層組織とネットワーク組織の二重構造」(p33)を有する組織のことである。そして、本書はその組織をどう作っていくかが解説される。
が・・・、読後感はもう一つ。期待外れと感じたのは、あまりにも「デュアルシステム」が概念的、抽象化された概念だったからだ。事例も一応紹介されているのだが、一般化がされてすぎていて現実感がない。残念ながら、現場の苦労のにおいがしないのである。
パート、パートでは参考になるところはある。たとえば、デュアルシステムの肝は、「両方(階層組織とネットワーク組織)のシステムに所属する人員を通じて階層組織とシームレスにつながっている」(p34)ことと書かれているが、ネットワーク型の組織は専担社員で構成された方がより効果的と考えていた私には新しい発想だった。また、プロジェクトの推進には上から目線的なビジョン、戦略目標を提示よりも、まずは「大きな機会を」を示すことが大切という。チームの視線を外に向けるべき(p138)というのも、首肯できる。
が、全般的には、コッター氏の過去のリーダーシップ論の焼き直し的なところも多く、私にとっては残念な一冊になってしまった。私からは、お勧めとは言い難い。
目次
はじめに
第1章 階層組織の限界
組織にとって最も根本的な問題
ネットワーク組織から階層組織へ
階層組織の限界
新しい道「デュアル・システム」
本書の構成
第2章 デュアル・システムとは何か
高業績企業は実施していた
デュアル・システムの構成
デュアル・システムを成功に導く五つの原則
八つのアクセラレータ
ネットワーク組織の波及効果
推進力を生むために
第3章 失敗事例に学ぶ、企業が陥りがちな罠
P社の事例――新しいCEO、新しい戦略
人事情報システムを開発する
はたして、プロジェクトの価値は
暗礁に乗り上げる
思い込みの罠
第4章 リーダーシップの本質と企業組織の進化
ベストプラクティスの限界
マネジメントとリーダーシップの違い
多くの企業がたどる、組織のライフサイクル
いま必要なのは、原点回帰アプローチ
第5章 成功事例にみる「五つの原則」「八つのアクセラレータ」
デュアル・システムをうまく回すには
業績が伸び悩むT社の挑戦
デビッドソン、五つの原則を肝に銘じる
アクセラレータ1 危機感を持ち、機会の実現をめざす
アクセラレータ2 コア・グループを形成する
アクセラレータ3 ビジョンを掲げ、イニシアチブを決める
アクセラレータ45 志願者を募り、イニシアチブを進める
アクセラレータ678 最初の成果を上げ、さらに成果を上げ続ける
誰もが驚いた二年後の成果
その他にも成功事例はある
第6章 真の危機感をいかに醸成するか
組織は本来的に自己満足に陥る
自己満足と偽の危機感
心を開き、外の現状に気づかせる
トップがロールモデルになる
成果を祝い、前向きのエネルギーを生む
いつでも、どこでも、誰に対しても
第7章 大きな機会、大きな可能性
なぜビジョンではなく、「大きな機会」なのか
ビジョン、戦略目標のデメリット
大きな機会を伝わりやすく示すには
ケース1 製造サービス会社の成長の加速
ケース2 サプライチェーンの改革
ケース3 医療関連企業の営業改革
ケース4 軍隊の組織改革
第8章 デュアル・システムを巡る「よくある質問」
多くの人の不安と疑問に答える
終章 企業の未来とデュアル・システム
変化は加速し続ける
戦略は大きく進化した
資料A 従来の変革手法はまだ通用するか
資料B いまデュアル・システムを導入すべきか