岩波文庫で『マクベス』を訳している、戯曲家木下順二氏による『マクベス』の読み方論。講演を冊子にしたものなので、手軽に『マクベス』の魅力に触れることができます。ただ、書いてあることは、『マクベス』を読むうえでいろいろ応用が利く内容になっているので、さらっと読み終えてしまうのは勿体ないです。
以下、備忘用に参考になった点を抜き出しておきます。
・物語冒頭(一幕一場)に三人の魔女が揃って言う"Fair is foul, and foul is fair" と一幕三場でのマクベスのセリフ"So fould and fair a day I have not seen"には照応性がある。
・4幕で、マクベスがどうしたらよいのかを知るために、再び魔女のところを訪れる際の魔女の世界は、魔女の作っている客観的な世界ではなくて、マクベス自身の中にある原点であり、そこに立ち戻ってみようとしていること。なので、場所の指定も無く、魔女が居るだけになる。
・イメジャリ(何かのものを連想させる、そのイメージを喚起させる言葉)の活用。例えば、「闇」を連想させるのに、「暗黒の道具」「暗い夜」「黒煙」「胆汁」、比較としての「光」らを効果的に使っている。他にも、「ノックの音」「衣装」「病気」のイメージの膨らませ方もある。
・マクベスが「自分を見ている自分」と「現実の自分」という二重の感覚を持っているところに今日性があり、そこが本作の魅力になっているのではないか。
【目次】
シェイクスピアとその時代
ドラマの導入と仕掛け
『マクベス』という芝居
いくつかの問題
『マクベス』の今日性