その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響1月定期Aプロ/ 指揮:下野竜也/ブラームス ヴァイオリン協奏曲ほか

2017-01-31 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
1月のN響定演はAプログラムが最後の順番。偶然かもしれないけど、これで良かった。新年早々の演奏会がこのプログラムだとヘビーすぎる。

 前半の2曲はいずれもチェコが暴力に襲われた悲しい歴史を巡る曲。マルティヌーの「リディツェへの追悼」はナチスによって焼き払われた村の追悼曲。そして、フサの「プラハ1968年のための音楽」はプラハの春を潰したチェコ事件を巡る音楽。私は2つとも初めて聴く曲だったが、特に「プラハ1968」は衝撃的だった。作曲者の怒りや強いプロテストの思いが聴く者にそのままぶつかってくる曲。N響の金管や打楽器陣の活躍で、壮絶な歴史絵巻を観るようだった。

 このプログラムがいつ組まれたかは知らないが、アメリカの新大統領就任を初め、歴史の逆コースを歩むがごとくの昨今の世界情勢の中で、この2曲を聴くのは、何かが予言されているようで、薄ら寒いものを感じたのは私だけだろうか?

 後半のブラームスは前半と打って変わって、優しい穏やかな演奏だった。バラーティのヴァイオリンは穏やかな中、実に彩り豊か。強いインパクトを与える演奏ではないけど、じみじみと聞き惚れる。前半のヘビーさが中和される感じ。アンコールはイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタから。見事としか言いようがない。

 下野さんとN響のコンビを聴くのは私は初めて。演奏会チラシを見ていつも思うが、下野さんのプログラムは興味深いものが多い。今回のもチェコ・フィルのビエロフラーヴェクさんとかが取り上げそうな演目だが、下野さんがN響でこうしたものをやってくれるというのは意義深いと思う。実直な指揮ぶりにもN響がしっかり応えていて、とっても良いコンビだと感じた。今年は10月にも登壇が予定されているので、また楽しみだ。


《だいぶ暖かかったこの日》




第1855回 定期公演 Aプログラム
2017年1月29日(日) 開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール

マルティヌー/リディツェへの追悼(1943)  
フサ/プラハ1968年のための音楽(管弦楽版╱1969)
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

指揮:下野竜也
ヴァイオリン:クリストフ・バラーティ

No.1855 Subscription (Program A)
Sunday, January 29, 2017  3:00p.m.  (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall  

Martinů / Memorial to Lidice (1943)
Husa / Music for Prague 1968 (Orchestral Version/1969)
Brahms / Violin Concerto D major op.77

Tatsuya Shimono, conductor
Kristóf Baráti, violin
コメント (2)
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