その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

映画館で観たかった:映画「マクベス」 (監督: ジャスティン・カーゼル、2015)

2017-01-22 08:00:00 | 映画


 「マクベス」の映画版は何本かあるようだが、本作品は2015年制作なので最も新しいものであろう。現代の撮影らしい映像美に満ち溢れた作品となっている。

 スコットランドの冷え冷えとした荒野、岩山が、美しく切り取られているし、城内の燭台が連なった印影も印象的だ。きっと映画館で見れば、スケール感や幻想さが迫力持って伝わってくるのだろうけど、DVDによるTV視聴では限定的な経験しかできなかったのが残念。

 ストーリーは、場面がカットされたり(酔っ払い門番のシーンは無しなど)、台詞が原作とは前後するなどはあるが、基本的には原作の筋に沿っている。大きな違いは、冒頭に原作にないマクベス夫妻の子供と思しき幼児の埋葬で始まり、所々でこの幼児が登場するところであるが、正直、その意図するところは良くわからなかった。

 本作の特徴は、マクベス夫妻の夫婦愛を、メインなテーマとして扱ったところだろう。この夫婦、悪妻マクベス夫人が迷うマクベスを悪事に引っ張り込む的なカップルとされることが多いと思うが、本作の印象は「悪にも愛は有る」的な描き方だ。特に、原作の第5幕第5場でマクベスがマクベス夫人の死の知らせを受けた場面では、台詞は淡々と達観したものであるにかかわらず、死んだ夫人の体を抱きかかえ、死を悲しむ。その愛の表現は今までの「マクベス」では見たことが無く、感動的だった。マクベス夫人がマリオン・コティヤールという美人女優であることも新鮮だ。

 日本では昨年公開され、必ずしもヒットしたとは言えないようだが、「マクベス」の新たな一面を見るという点で、十分視聴する価値はあると思う。


スタッフ
監督: ジャスティン・カーゼル
原作: ウィリアム・シェイクスピア
製作: イアン・カニング / エミール・シャーマン / ローラ・ヘイスティングス=スミス
撮影監督: アダム・アーカポー
美術: フィオナ・クロンビー
衣装: ジャクリーン・デュラン
音楽: ジェド・カーゼル
キャスト
マクベス: マイケル・ファスベンダー
レディ・マクベス: マリオン・コティヤール
バンクォー: パディ・コンシダイン
ダンカン王: デヴィッド・シューリス
マクダフ: ショーン・ハリス
マルコム王子: ジャック・レイナー
コメント (2)
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