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今年2月に続いてのパーヴォさんの登場です。ベートヴェンのヴァイオリン協奏曲にシベリウスの「4つの伝説」という魅力的プログラムに加え、ソリストにはテツラフさんを迎えるという超強力布陣です。会場の入りは8割程度だったでしょうか、この内容で満員にならないのは少し残念。
そのテツラフさん、何度も来日してますが、お見受けするたびに風貌もワイルドになってますが、演奏も進化しているように聴こえました。鋭さあふれる演奏で、聴衆の耳を刺すような演奏です。一方で、弱音部分は巨艦NHKホールの中で、聴衆の皆さんが耳をそばだてて聴くほど。カンデンツァ部分はベートーヴェン自身は残していないとのことで、ティンパニを使ってテツラフさんが編曲したものをご披露頂きました。
N響の演奏は、先月のブロム翁とマリア・ジョアン・ピレシュのベートーヴェンピアノ協奏曲の時の包み込むような柔らかな演奏とは全く異なり、切れがあって緊張感を感じるものでした。テツラフさんのヴァイオリンと絶妙にマッチしており、非常にレベルの高い共演でした。
後半はシベリウスの「4つの伝説」。この交響詩は、学生時代にフィラデルフィア管弦楽団を現地で聞いて以来、個人的に大好きかつ思い出ある曲です。N響では2014年2月に尾高さんが取り上げてくれましたが、今回はパーヴォさんがどう聞かせてくれるのか楽しみにしてました。
ダイナミックかつドラマティックな素晴らしい演奏でした。第1曲目の「レンミンケイネンと乙女たち」は私が聴き慣れていたものよりも随分とスピードが速く聞こえたのが意外でしたが、パーヴォさんとN響メンバーの気持ちが入った演奏にガンガンに引き込まれました。第2曲の「トゥオネラの白鳥」は、イングリッシュ・ホルンの清明さと情感を併せ持ったソロが素晴らしい。そして、第3曲「トゥオネラのレンミンケイネン」、最終曲「レンミンケイネンの帰郷」 もN響のアンサンブル力がフルに発揮された、名演でした。
パーヴォ・N響のコンビによるシベリウスは、交響曲2番とヴァイオリン協奏曲を聞いて来ましたが、畳み掛けるような独特のリズムとクリアな音が共通にある気がします。最もこれはシベリウスの特徴なのか、パーヴォさんの特徴なのかは、私にはよくわかりませんが・・・
当然ながら終演後は凄い拍手。いつ名演を聞かせてくれるパーヴォ/N響コンビですが、今回はその中でも有数のものだったと確信しました。満足感いっぱいで、嵐のような強雨の中、帰途につきました。来週末も楽しみです。
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第1885回 定期公演 Aプログラム
2018年5月13日(日) 3:00pm
NHKホール
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
シベリウス/交響詩「4つの伝説」作品22 ―「レンミンケイネンと乙女たち」「トゥオネラの白鳥」「トゥオネラのレンミンケイネン」「レンミンケイネンの帰郷」
No.1885 Subscription (Program A)
Sunday, May 13, 2018 3:00p.m.
NHK Hall
Paavo Järvi, conductor
Christian Tetzlaff, violin
Beethoven / Violin Concerto D major op.61
Sibelius / “Four Legends”, sym. poem op.22 - “Lemminkäinen and the Maidens of Saari” “The Swan of Tuonela” “Lemminkäinen in Tuonela” “The Return of Lemminkäinen”