その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

「ブラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」 @国立西洋美術館

2018-05-28 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


プラド美術館展に行く。ベラスケスの作品が7点、一挙に公開されるのが売りだ。

ベラスケスの絵画はもちろんのこと、それ以外も17世紀前半のスペイン絵画の傑作が多く展示され、見ごたえ満載だった。展示の切り口は神話、宮廷、風景、生物、宗教と言ったテーマ別だが、通して観ると、スペインの黄金期の時代の雰囲気も感じ取ることができる。

ベラスケスの中では、個人的には軍神マルスを描いた「マルス」が一番のお気に入り。およそ「神」っぽくなく、実に人間的だ。鎧を解いた姿勢、疲れ気味の表情、肌に刻まれた皺など、全体と細部の両方から、観るものにマルスは何を想っているのかを問うてくる。引き込まれるように見入ってしまう。


<ディエゴ・ベラスケス《マルス》1638年頃 マドリード、プラド美術館蔵>

ポスターにも取り上げられている「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」は爽やかな青空をバックに描かれた王子が、幼いながらも高貴さと勇敢さを兼ね備えた将来を嘱望される名君候補であることが伝わってくる(歴史的には10代後半で亡くなったとのこと)。ポスターでは絵全体の上部分が切り取られていたのだが、絵全体でみると、騎馬が随分と胴太で脚が短く描かれていたのが発見だった。下から見上げて鑑賞される前提で描かれたためと解説があり、なるほどとと納得。

ベラスケス以外でも、アンソニー・ヴァン・ダイクの作品が2つ、ティツィアーノ、ルーベンス、ロラン、ムリーニョなどの力作が揃っている。ヴァン・ダイクはイギリスでも良く見ており、好きな画家で展示は嬉しかった。ベラスケスが嬌人を描いた「バリェーカスの少年」を挟んで、ファン・バン・デル・アメンの「嬌人の肖像」とアロンソ・サンチェス・コエーリョの「王女イサベル・クララ・エウへニアとマグダレーナ・ルイス」がいずれも嬌人が描かれているのは、宮廷の様子が伺われる。

ゴールデンウイークの休日の谷間に訪れたが、比較的空いていてゆっくり見れたのは嬉しかった。昨日(5月27日)までだったが一見の価値ある企画展なので、見逃した人は神戸に行くべし。



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