江戸東京博物館で開催中の大浮世絵展を訪れた。喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳という五人の江戸時代を代表する浮世絵師による、誰もがどこかで目にしたことのある代表的浮世絵が惜しげなく展示してある。作品の多くをシカゴ、ミネアポリス、ボストン、メトロポリタンらのアメリカの美術館や大英博物館、ベルギー王立美術歴史博物館等の海外の美術館から出展を受けており、これだけの網羅的な展示はなかなかないのではないか。
分かりやすいのは、歌麿の美人画、写楽の役者絵、北斎と広重の風景画、国芳の武者絵や戯画と言った、日本史の教科書に出てくる代表的組み合わせに集中して展示されている点だ。なので、個々の絵師の個性や違いが引き立つ。日本史を受験科目にしている高校生には是非見てほしい。間違いなく、一度で頭に刷り込まれるはずなので、試験が終われば忘れる一問一答式暗記に時間を割く手間が省けるし、何よりもホンモノだ。
私自身、図録や本の印刷物では見たことあっても、実物を見るとその色合いや描写の細かさが良く分かり唸らされた。個人的には、どれも似ているように見えるが微妙に個性が描きわけている歌麿の美人画と、風情と人々の息吹を感じさせる広重の風景画が好みだった。浮世絵に描かれた風景や人は、数百年前もの昔のことで今とは大きく異なるのだが、妙に懐かしさや親しみを感じるのは、日本人としての感性、DNAが反応するのだろう。雨の描き方ひとつとっても、絵によって様々な種類の雨が彫り分けてあり、一つ一つの情景を目の前で見ているようだ。
人の入りは大混雑というほどではなかったが、浮世絵の場合、サイズと描写の繊細さからどうしても、絵に近寄ってじっくり見るという形になってしまうので、どうしても人の列が出来てしまいやすい。なるべく、空いている時間帯に行くことをお勧めしたい。
喜多川歌麿「当時三美人」(Wikiからの引用なので展示作品と異なる可能性あり)
歌川広重「庄野 白雨」(Google画像検索からの引用なので展示作品と異なる可能性あり)