開演10分前に当日券を購入し、都民芸術フェスティバルに飛び込んだ。「炎のコバケン」小林研一郎さんの指揮は初めてだし、プログラムはスラブものの超メジャーな2曲だが、久しく実演に接しておらずとっても嬉しい機会。お手頃価格もあってか、芸劇はほぼ満員。
前半の周防亮介さんのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が特に印象に残った。私には実演に接するのも、お名前も聴くのも初めてだったが、安定した美しい音に魅了された。端正で真っすぐな音色だ。演奏姿も美しく、日本の茶道や華道に通じる気品を感じる(随分前に仕事で講演に来て頂いた假屋崎省吾さんがお花を活ける実演を拝見したのを思い出した)。とっても丁寧に一つ一つの音を弾いているように見える。演奏後の所作も礼儀正しい。3階席からは私の視力では、どんな表情で弾いているのかが分からないのが残念だったが、遠く離れた舞台に引きつかれっぱなしの30分余りだった。
後半の「展覧会の絵」は前半に比べるとインパクトが弱かった印象。勝手に破天荒な演奏を想像してたので、コバケンさんの指揮も「炎」というより、庭でやる花火のようでやや拍子抜け。決して演奏に不満があるわけではないし、しっかりまとまっていたのだが、心動かされるというところまで行かずじまいだった。ただ、会場は割れんばかりの大拍手だったので、私の最初の期待値がおかしかったのだろう。
可笑しかったのは、コバケンさんがコンマスさんに何事か囁かれて「アンコールするのを忘れてました」とご挨拶。そしてアンコールが始まった。とっても優しく、心染み入るカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲だった。
●日本フィルハーモニー交響楽団
〜スラヴの響き〜
【開催日時】2020年1月22日(水)19:00開演(18:00ロビー開場)
【出演】指揮/小林研一郎 ヴァイオリン/周防亮介
【曲目】チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
ムソルグスキー=ラヴェル:組曲「展覧会の絵」