★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

秋刀魚が食卓に載った日

2020年09月20日 12時12分51秒 | 徒然(つれづれ)
 ウォーキング途中、信号待ちで停まった横の車から、ロックやJポップではなく、さくらと一郎の「昭和枯れすすき」が流れてきた。
 運転席を見ると、私より上の世代の白髪の老人だ。
 懐かしい曲に思わず頬が緩んだ。 

 そこで名句が浮かんだので、ここに記しておこう。
 
  食卓に秋刀魚が載った年金日

「お、今日は奮発したな」
 食卓には秋刀魚の塩焼きと味噌汁、白菜の漬け物が載っている。
「おとうさん、サンマ好きだったでしょう。スーパーの特売で安かったの」 
「今年はサンマは不漁で、高いらしいな。たまには贅沢もいいか」
「土用の丑のうなぎや夏のハモも我慢してくれたから、今日は年金も入ったし、サンマくらいはね」
 開け放った窓から涼しい秋風が舞い込む。
 年金生活者のつつましい夕餉のひと時だ。
 定年退職後に再就職しようと思った私に、女房は言った。
「40年以上も朝から晩まで働き詰めだったのに、再就職なんてもってのほか。どうぞゆっくり休んでくださいな。夫婦ふたりだけなら年金でなんとかやっていけるわよ」
 その言葉に甘えて、去年から引きこもり年金生活だ。
 年老いた私たち夫婦の人生の秋はゆっくりと流れてゆく。

 そんな想像をしてみる。
 現実はそんな甘いものじゃない。
「毎日家の中でゴロゴロして。働きに出たらどうなの」
 引きこもり年金生活を決め込んだ私に、臭い、汚い、鬱陶しいと、朝から家内の怒声が飛ぶ。
「年金だけで今後暮らしていけると思ってるの? 病気になったらたちまち生活破綻するわよ」
 家内は終日内職の在宅校正をやっている。
 当初は家事の合間にという言い訳をしていたのが、今では仕事の邪魔だから、静かにして、どっか行って、ご飯は適当に食べてと言う始末だ。
 それにもめげずに、家内の愚痴や小言は右の耳から左の耳へ聞き流し、私はノンストレスの引きこもり年金生活を続けている。
 


★★Amazon Kindle Storeに30冊の小説をアップしています。←自慢 これが全然売れません。←悲観 たそがれジョージという脱力系のペンネームのせいでしょうか。←不安 愛着のある名前なので変更するわけにはいきません。←キッパリ 内容につきましては、ちょっぴり自信あり。←謙遜★★ 拙著電子書籍ラインナップ・ここから買えます。
読後のカスタマーレビューをいただけたら幸いです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする