拙著『1973 追憶の京都』執筆にあたり、私の青春の音楽的キーワードをいろいろ検証してみた。
時系列的に並べると歌謡曲、加山雄三、ビートルズ、吉田拓郎、ボブ・ディランとなる。
歌謡曲は物心ついた時から自然と耳に入ってきた受動的なものだ。
加山雄三は映画の若大将シリーズに感銘を受けて、その歌手としての一面を追ううちに彼のソングライティングに憧れてハマったものだ。
グループサウンズ全盛の中学生の頃、まわりの熱狂をよそに、加山雄三を聴きまくり、ギターを始めるきっかけになった。
英語がわかるようになった中学の終わりから高校生の頃は、ビートルズに目覚めた。
彼らの最高傑作アルバム『アビイロード』に衝撃を受け、一気にビートルズの歴史を遡った。
ロックンロールを基礎にそれを派生させ、独自のジャンルを築き上げ、ロックシーンやポップシーンの頂点に立ったビートルズを、かろうじて彼らの現役時代に体験できた。
高校時代は日本のフォークシーンに革命を起こした吉田拓郎の歌詞に共感を覚えた。
英語の歌詞と違い、ダイレクトに脳髄を刺激する日本語の新鮮で同時代的な歌詞とシンプルなメロディは、聴くだけの音楽からプレイする音楽へと私を誘った。
吉田拓郎が影響を受けたというボブ・ディランも聴きまくったが、歌詞の難解さは当時の私にはなかなか理解できなかった。
ネイティブでも100%理解するのは難しいといわれているから当然だろう。
また詞先で歌詞に重きを置く楽曲は、ビートルズのメロディアスな曲と比べて、多分に見劣りがした。
彼は歌手というより詩人だと理解した。のちのノーベル文学賞受賞がそれを物語ることになった。
そんないろんなアーティストに触発され、それが渾然一体となり、私の青春の音楽的素地ができた。
そしてそれは今でも私の中で脈々と続き、現在の音楽を聴く上での道標となっている。
拙著「1973 追憶の京都」