記憶の断片

　ウォーキングをしていると、たまにフッと頭の中に浮かんでくる数字がある。

　　6435･･･初めて就職した会社の営業車の番号
　　525･･･転職した会社の社用車の番号
　　02280･･･初期の社員番号
　　09552-8-0235、849-42･･･今は無き実家の電話番号と郵便番号

　15年ほど乗って廃車にした自家用車の番号や、35年間勤めた会社の電話番号は忘れたのに、それらなんの意味もない番号が記憶の隅に残っている。
　サラリーマン時代、まだ携帯電話がなかった頃は、主要取引先の電話番号は10件以上は暗記していた。
　それらは時代とともに記憶の引き出しから消滅してしまった。

　会社の同僚や取引先の担当者の顔や名前も、一部を除いてほとんど消滅するか、おぼろげな記憶となっている。
　その一部の中には、懇意にしていた相手ではなく、一期一会に近い存在の人もいる。
　そんな人々の顔や名前が何の脈絡もなく浮かんでは、また記憶の底に沈んでいく。

　長年やっている競馬においても、そこそこ有名な馬の名前は忘れているのに、名もない馬の名前がフッと浮かんでくることがある。
　たぶん何かと関連付けて、記憶の中に焼き付けられていたのだろう。

　記憶の断片のデフラグは、その重要性や時系列ではなく、自身の思考とは無関係に、脳が決めた法則や関連性によってなされるようだ。
　たぶんそれが加齢による記憶の混濁なのかもしれない。

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